炎加世子
滝上ヒデ
ある地方の小都市の荒涼とした風物を背景にした、三人の男女の物語。田村孟・成田孝雄の脚本を新人第一回の田村孟が監督した。田村監督は、昭和八年生れ、東大文学部卒後、三十年大船に入社した。撮影は舎川芳次。
ある地方の小都会。滝上ヒデは県会議員で町のボス弥兵衛の長男と心中し、彼女だけが生き残った。息子を奪われた弥兵衛の一家は、娘の清子を除いてヒデを憎んだ。次男の竜夫は子分の勝、鉄らに命じてあらゆる妨害をし、ヒデを町から追い出そうとした。こんな町の飯場に警察の目を逃れきた殺人犯の川村安男がヒデに案内されてきた。作業員のとびっちょ、デカ、タア坊、熊らは、安男の荷物をあけ、下着等をひっぱり出して着こみ、挨拶代りにと酒をたかる始末だった。ヒデは残飯をつんだリヤカーをひいての帰途、竜夫たちに残飯をひっくりかえされた。竜夫は野次馬の中に安男を見つけ、彼にヒデをひっぱたくように言った。安男は殴れなかった。竜夫は安男を殴って去った。ヒデは安男の傷の手当をしようとした。とびっちょがひやかしたので、安男は人混みの中に消えた。翌日、ヒデが安男に傷の具合を聞いていると、タア坊がラブシーンだと騒ぎたてた。作業員たちは逃げ出そうとする安男をヒデの方に突きとばした。安男は突然ヒデに平手打をくわせ、残飯をひっくりかえした。弥兵衛は選挙が近づいたので、息のかかっている映画館の支配人塩谷を通じてヒデに金を渡し、町から出るようにともちかけた。ヒデはその金を竜夫に返した。ある時、竜夫は作業員たちの前でヒデに安男と寝るよう強制し、二人を一室に閉じこめた。ヒデは困惑する安男を逃がしてやり、竜夫には二人はもう他人でなくなったと言った。その後、竜夫に殴られた安男は、傷だらけの体でヒデの家に行き、彼女を殴ったが、興奮からヒデを抱いた。安男はヒデに一緒に逃げてくれと懇願したが、ヒデは「貴方のような人間はどこに行ったところで強く生きられるはずはないし、この町を去ることは竜夫への敗北を示す」と拒否した。ある日、安男と親しかった作業員の岩井が警察にあげられた。安男が密告したのだ。そのため、かえって安男の身辺にも警察の手がのびてきた。竜夫はヒデが暴力には屈しないことを知り、バーのマダムにならぬかともちかけ、自分の勢力下に入れようとした。しかし、ヒデはそれを断り、自分の意志で町を出ると言った。竜夫はヒデを殴った。安男は町を脱出しようとしたが、ヒデが暴行を加えられているのを知り助けに行った。ヒデは死んでいた。安男は殴られてもけられても竜夫たちにたち向っていった。竜夫の手にナイフが光った。腹を刺された安男は、ナイフを拾い上げると竜夫に迫っていった。
滝上ヒデ
川村安男
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とびっちょ
貯金
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熊
エミ
塩谷
勝
鉄
竜夫の手下
刑事
豚舎の老人
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