語り手
グァム島から帰った伊藤、皆川両氏が現在の日本の政治、社会、文化、民俗等を見て廻り、彼らが失っていた戦後十六年を記録フィルムを通して回顧しようというもの。
ストーリー
戦争の終ったのも知らず、グァム島のジャングルにひそんでいた二人の日本兵が帰ってきた。南の島での十六年、その間に日本は敗戦から復興へのめまぐるしい歴史を生きた。伊藤さん、皆川さんは上京し、人間ドックに入った。「東京ってずいぶん汚ないところだ」伊藤さんはそう呟いた。二人は皇居前に立った。天皇の人間宣言、復員、財閥解体、東京裁判。二人は「戦争だけはもう沢山です」と言った。デパートに入った。戦後強くなったのは、女と靴下だという。ヒロポン、競輪、パチンコが流行し、カミナリ族、ロカビリー族、ファンキー族を作った。マスコミにのって皇室ブームがおこった。しかし、伊藤さんは皇室の現況には興味を示さなかった。ナイター見物に出かけた。背番号3が二千万円の長嶋だといわれてもピンと来なかった。グァム島で気になっていたのは日本の軍隊がどうなったかということだった。朝鮮戦争勃発直後、アメリカの命令でできた警察予備隊が保安隊、自衛隊と変った。武器はみんなアメリカ。二人が帰国してまっ先に覚えた言葉が「アンポハンタイ」だったという。原爆の記録映画を見て、想像をこえたすさまじさに驚いた。伊藤さんは故郷に帰った。東京で何を見、何を知ったか。それは、これから少しずつ伊藤さんの再出発の手がかりとなるだろう。