小林桂樹
阿地川盤嶽
昭和八年に山中貞雄が作った「盤嶽の一生」の再映画化。白井喬二の原作を、岸松雄と新藤兼人が共同で脚色し、「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」の松林宗恵が監督した。撮影は「太陽を抱け」の岡崎宏三。パースペクタ立体音響。
武州栗橋に住む一刀流指南の老劔士大垣周次郎は、曲ったことが大嫌いなため道場は閑古鳥の鳴く淋しさ、たった一人の弟子阿地川盤嶽も、嘘と女に滅法弱い無類のお人好しだ。或る日、師匠より一人娘浪江の婿になることを聞かされた盤嶽は就職のため江戸へ発つことになった。名刀日置光平を餞別に旅立った盤嶽は人を疑うことがないため騙されてばかりいた。そんな時に、盤嶽の竹馬の友・三輪嘉五郎が彼を追って来た。剣術より世渡りの上手な彼は、代官武富が刀劔集めに夢中なのを知り盤嶽の持つ光平を騙しとろうとやって来たのだった。甘言をもって失敗した三輪は仲間と語らって盤嶽を襲った。腕を斬られて崖下に転落した盤嶽は、三次とその妹お時に救われた。しかし、その治療代のために金貸し佐兵衛の術策に落ち、光平をまんまと佐兵衛に取られてしまった。そんな盤嶽にお時は思いをかけるが、盤嶽は金を作って刀を取り戻すことを誓い江戸に向ってしまった。それから二年、浅草の大工熊五郎の家に食客となった盤嶽は柴田千蔵の馬飼所に就職していた。そこへ、お時が光平を持って訪れて来た。盤嶽を慕うお時が苦界に身を沈めて金を作ったのだ。そんな事情を知らぬ盤嶽はただ喜んだ。しかし、刀を執念深く狙う三輪と会った盤嶽は、浪江の祝言を聞いてびっくり。早速、武州へ飛んで帰った盤嶽は、貧乏に負け娘の嫁入りで楽隠居に目を細める師匠の姿に失望、光平を突っ返しして表へ飛びだした。そして、初めてお時だけが自分に真実を尽してくれたことを知った。盤嶽はお時にもう一度会おうと江戸へ引き返した。お時は店から逃げ出して熊五郎の家にかくれていた。お時に会えた盤嶽は、彼女を追う河童松一味を今は力一杯叩きのめした。いままで正直、純情ゆえに皆から騙され裏切られ通しだった盤嶽は、お時と手に手をとって自由の天地を目指して旅立った。幸あれ盤嶽!がんばれ盤嶽!
阿地川盤嶽
大垣周次郎
娘浪江
三輪嘉五郎
愛人まさ
関屋猷之助
武富多平太
正直忍斎
三輪の女房
馬子三次
妹お時
医者竜伯
狂言自殺の女
狂言自殺の女の娘
河童松
家主
小料理屋の女
大工熊五郎
女房おしげ
柴田千蔵
為永鉄心
与力松川
うなぎ屋の親爺
監督
原作
製作
製作
撮影
音楽
和楽
美術
編集
照明
録音
助監督
助監督
構成
脚色
脚色
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