萬屋錦之介
森の石松(新進演出家)
「庄助武勇伝 会津磐梯山」の小国英雄と「海賊八幡船」の鷹沢和善の共同脚本を、「海賊八幡船」の沢島忠が監督した娯楽時代劇。撮影は「親鸞」の坪井誠。
石井は新進演出家だが、残念ながら実力は発揮されていない。今日も今日とて「森の石松」の舞台緒古で意のままにならぬ役者どもに業をにやした彼は、助手の岡田ふみ子にあたりちらした。ふみ子を追っ払うと酒を飲み、寝こんでしまった。--清水港の浜辺。「石さん」の叫び声に起き上った一人のやくざ、森の石松である。が「俺は新進演出家の石井だぞ」とマゲをむしりとろうとする始末。奇行続出で気ちがい扱いにされ、座敷牢に入れられてしまった。日が経ってどうやら奇行もおさまった石松は、次郎長に金比羅代参を命じられた。許婚のおふみと一緒とあって承知した。大きな風呂敷包みを中にして、とっ組みあっている須走りの多蔵と伝法の佐吉。石松、弱い方の味方をしたのが悪かった。佐吉の千両箱をかついで旅をするハメになった。次に、やくざに追われる旅の男嘉助の助太刀を買った。が、嘉助は伜の芳太郎を頼むと言って死んでしまった。芳太郎を肩に、千両包みを背に石松はゲッソリした顔つきで旅を続ける。金比羅代参を無事すませた矢先、小松村の七五郎に会った。七五郎の家にワラジを脱ぐことになった。その夜、旅の疲れからか芳太郎が熱を出した。石松、医者を呼び出しエンマ堂を通りぬけようとした時、都鳥一家に襲われた。多勢に無勢、都鳥吉兵衛を刺した時には、深手をおい立っているのがやっとだった。駈けつけたおふみに、「筋書き通りになったぜ」と息もたえだえの石松--「先生ッ」と呼ぶ岡田女史の声にはね起きた石井、「できた!おふみちゃんできたぞ」と有頂天になって喜んだ。
森の石松(新進演出家)
おふみ(演出助手岡田ふみ子)
お民(七さんの女房)
都鳥の吉兵衛(劇場支配人)
清水の次郎長(照明主任の長さん)
慌ての六助(石松役者)
大政(大連役者)
小政(小政役者)
勝沼の嘉助(ダフ屋)
芳太郎(嘉助の息子)
お蝶(劇場の掃除婦)
伝法の佐吉(月賦屋林)
須走りの多蔵(劇場の守衛文吉爺さん)
手島の兼吉(殺陣師時さん)
駒井の源三
留
三吉
為吉(船着場番人)
医者
宿の女中(掛川宿ねじ金屋)
都鳥の子分
都鳥の子分
都鳥の子分
人夫
小松村の七五郎(寿司屋の七さん)
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