藤田進
木島浩輔
「十六夜街道」の脚本を書いた書いた新藤兼人が、「愛妻物語」についで自ら脚本を書きおろし、監督に当たったもの。撮影は「十六夜街道」の竹村康和が当たっている。「唐手三四郎」の藤田進、「月から来た男」の水戸光子、「浅草紅団」の乙羽信子の主演で、菅井一郎、小柴幹治、殿山泰司などが助演している。
北国の渓谷にある発電所の技師木島浩輔は、病弱の妻時枝が東京の実家へしばらく帰りたいというのを送って直江津まで出た。時枝は病弱なばかりでなく、山深い単調な生活に堪えられなかったのである。浩輔は直江津からの帰途東京から新しく赴任して来た電気技手藤川敦子を同行したが、車中彼女にからかいかけた不良を敦子が逆に翻弄したのにはおどろいた。山の生活では、しかし敦子は不自由な浩輔の身辺にまめまめしく気をくばってくれた。大晦日の夜には、例年の通り発電所でパーティが催され、その夜浩輔と敦子とはいつまでも踊り、二人で雪の戸外へ出て行ったが、それ以上には進み得ない二人だった。時子は東京へ出て、初めて浩輔のない生活の無意味なことを悟り急に思い立って山へ帰って行った。時子が着いた日、浩輔と敦子は二人でスキーに出かけ、山小屋で敦子は戦争中堕落しかけた自分の身の上を語った。しかし、時子が帰ったことを知ると、敦子は発電所をやめて山を去った。早春になって浩輔は東京へ出た時、銀座のキャバレーで敦子の姿を見つけたが、敦子は浩輔の眼をのがれるように姿を消した。しかし、その敦子が突然再び山へ姿を見せ、どうしても浩輔のことが忘れなかったと時子もいる前で告白し、二人の幸福を願ってまた去って行った。そして、その夜雪崩は敦子をその下に埋めてしまったのだった。
木島浩輔
妻時枝
藤川敦子
所長
吉川技手
宮林技手
富田技手補
田部義手補
宮林の妻
支局課長
吉田
看護婦
[c]キネマ旬報社