片岡千恵蔵
浮世捨三郎
製作は「天草秘聞 南蛮頭巾」の高村將嗣と「赤穂城」の玉木潤一郎とが共同で当たり、大阪新聞連載の山手樹一郎の原作『はだか大名』より、「天草秘聞 南蛮頭巾」の木下藤吉と「チャッカリ夫人とウッカリ夫人」の渡辺邦男が脚色し、同じく渡辺邦男が監督に当たり、渡辺孝が撮影を受け持っている。出演者の主なものは「赤穂城」の片岡千恵蔵、「浮雲日記」の花柳小菊、「離婚」の田崎潤、「天草秘聞 南蛮頭巾」の御園裕子の他、大友柳太朗、澤村國太郎、進藤英太郎などである。
深川辰巳の鉄火芸者小稻は、病気の妹芸者小品に足を洗わせてやるため、盗賊油屋傳次がわざと置き忘れた五十両の金を小品の身代金の一部に使ったことで、八幡様に祈願に来て、そこへ来合わせた浮世捨三郎に願いの筋を立ち聞きされた。浮世捨三郎は明石松平十万石の嫡子であったが、将軍家齊の子齊信が天下りの養子で世嗣となったため若隠居の身となり、手元金五十両を持って飄然と屋敷を出たのであった。浮世捨三郎は小稻と傳次の掛け合いに立ち会ってやったばかりでなく、高利貸しから責められる小品姉弟にポンと五十両を与えた。小稻と傳次はその気風にすっかり惚れ込み、特に男嫌いで通した小稻の胸には生まれて初めての恋心が芽生えた。さらに、齊信の意に従わないため座敷牢に入れられた豪商伊丹家の娘美代を捨三郎が救い出してからは、佞臣大内右源太の一味が一層厳しく捨三郎の身辺を狙うようになった。美代を捨三郎に連れ去られて、命に代えても取り戻せと命じられた老女玉野や美代、小品などを根岸の伊丹屋の寮に匿っていた捨三郎は、浜町河岸で右源太の一味に襲撃され、根岸の寮にも彼らの魔手が延びていることを知ると、必死になって血路を開き、根岸を目指して馬を疾駆させるのであった。(前篇)
浮世捨三郎
小稻
油島傳次
小品
要吉
お美代
お松の方
玉野
松平齊信
大内右源太
塚越主計
平田作十郎
佐平
伊丹屋宗兵衞
兼次
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