市川右太衛門
荒木又右衛門
“キング”に連載された山手樹一郎の原作を、「花吹雪御存じ七人男」の八住利雄が脚色し、「チャッカリ夫人とウッカリ夫人」の渡辺邦男、渡辺孝が夫々監督、撮影に当り、「血ざくら判官」の山田栄一が音楽を担当している。出演者は市川右太衛門(疾風愛憎峠)、高峰三枝子(女の園)、石井一雄、田代百合子、岡譲二などである。
三年ぶりに妻お谷の実家江戸の渡辺靭負邸に赴く途中の荒木又右衛門は、飯沼天真斉門下の三羽烏に因縁をつけられた事がきっかけで、手裡剣お蝶と知り合った。その頃江戸では嘗てお谷に恋慕していた靭負の甥河合又五郎が酒と賭博に身を持ちくずし、無頼の旗本連中に入りまじって放埒な生活を続け、靭負の一子数馬と相愛の又五郎の妹およねの胸を痛めつけていた。江戸に入った又右衛門は恩師柳生但馬守に代ってその道場の代稽古を勤めたが、或る日浅草奥山の見世物小屋でお蝶に恥をかかされた天真斉が、悪旗本阿部四郎五郎一味にけしかけられた勢いで、お蝶を庇う又右衛門に果し状をつきつけて来た。又右衛門は難なく天真斉を討ち果したが、悪旗本たちの陰謀は一層殺気立って行った。折も折、賭博の借金返済に家宝の名刀正宗を当てようと渡辺家を訪れた又五郎は靭負を斬って四郎五郎一味の許へ転げ込み、かねて事あれかしと望んでいた四郎郎五郎一味はこの事件をきっかけに真正面から大名対手の一戦を交えようと挑んで来た。又五郎は公儀の措置を恐れて旗本三十八騎の附人と共に直ぐさま西下の旅に発ったが、この事を聞いた数馬は、容易に助太刀に立とうとしない義兄又右衛門に憤激し、若党二人を率いて又五郎の後を追った。やがてお蝶たちも又右衛門の態度を不満として数馬の援助に大阪へ向った。だが又右衛門には深謀があった。或る日、主君大内記を訪ねた又右衛門は柳生流秘伝の真剣白刃取りの極意を伝授し仇討旅の暇を貰って数馬の助立ちに駆せつけた。一方又五郎は一夜、宿で覆面の少女に不意を襲われた。それは数馬の身大事と兄の命を狙ったおよねだった。……明くれば伊賀上野・鍵屋の辻に旗本三十八騎と又五郎を迎え撃った又右衛門は縦横無尽に剣をふるって忽ち附人三十八人を斬り倒し、首尾よく数馬に又五郎を討ち取らせた。漸く明け始めた街道には又右衛門を見送るお蝶の姿があった。
荒木又右衛門
お谷
お蝶
渡辺靭負
数馬
よね
柳生但馬守
阿部四郎五郎
近藤登之助
兼松又四郎
夢の市郎兵衛
飯沼天真斎
池田公
松平伊豆守
河合又五郎
女芸人
本多大内記
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