伴淳三郎
古川凡作
梁取三義の小説を「母笛子笛」の舟橋和郎と「お役者小僧 江戸千両幟」の共同脚色者の一人、安田重夫とが共同脚色し、同じく「お役者小僧 江戸千両幟」のコンビ福田晴一が監督、片岡清が撮影を担当した。主なる出演者は「おんな大学」の伴淳三郎、関千恵子、「若き日の千葉周作」の花菱アチャコ、「柔道開眼」の宮城野由美子、「絵島生島」の山路義人、「燃ゆる限り」の幾野道子など。
終戦も間近い昭和二十年六月、古川凡作は令状を受けて入営する朝、急な神経痛の発作で足腰が立たなくなった。乳母車で入営した発明心に富む凡作は、「不髄の身が乳母車で入営」と思わぬ英雄扱いを受けた。新聞でこれを読んだ初瀬悦子という女性が感激のあまり、慰問に来てくれ、凡作は有頂天だった。だが、軍隊生活は正気の沙汰とは思われないほど厳しい。ある夜、こっそり悦子と逢った凡作は弾薬庫の近くで、うっかり煙草の吸殻をこぼれた石油の中に捨て、やっとのことで消しとめたが、駈けつけた隊長の若林から殊勲甲と激賞され、従卒に抜擢された。役目は隊長と妾マリとの連絡係である。だがへマをやったばかりに、隊長の奥さんからマリと結婚しろと迫られた。凡作は親友柳田二等兵の親子愛に持前の義侠を発揮して、柳田の招集解除を交換条件にマリと式をあげた。ところが、隊長は言を左右にして約束を果たさず、金鵄勲章でごまかしてしまった。凡作は悦子の誤解をとくため、女装して軍需工場へ潜り込むがスパイ容疑で憲兵につかまり、本物の八路軍のスパイが現れるまで赦されなかった。やがて終戦の日、若林隊は大混乱に陥り、隊長以下古参兵たちがあさましくも物資を奪い合うのを見るや、怒りに燃えた凡作は銃で脅かして、全員を整列させた。そして、日頃のウップンを思い切り晴らしたうえ、彼らに反省を求めた。一同の心にも凡作の熱意は通じ、全員は一つ心になって泣いた。復員の日、迎えに来た悦子と柳田の息子に「これから何の発明をするの」と訊かれた凡作は、「いつまでも平和がつづく機械を作るのだ」と昂然と答えた。
古川凡作
柳田一平
柳田三太
初灘悦子
山元鶴子
中村たみ
若林彦一
若林静江
清水マリ
野尻敬子
伊藤二等兵
塚口二等兵
部隊長
佐々田少尉
大妙淮尉
菊岡伍長
吉原軍曹
本間上等兵
大橋上等兵
守衛
狂人
憲兵将校
若林家女中