萬屋錦之介
美之助
元禄時代を背景に女の執念、恋慕、嫉妬、そして親子の愛情を恐怖と幻想の世界の中に描いた北条秀司源作の色彩映画化。脚本は「おしどり囃子」の八尋不二。監督は「大学の石松」の小石栄一、撮影は「長脇差奉行」の三木滋人が担当する。出演者は「異国物語 ヒマラヤの魔王 (三部作)」の中村錦之助、「江戸三国志 (三部作)」の千原しのぶ、「三っ首塔」の浦里はるみ、「お父さんはお人好し 迷い子拾い子」の浪花千栄子、「江戸三国志 (三部作)」の吉田義夫、「人妻椿 (前後篇)(1956)」の山形勲、その他岡村文子、沢田清など。なお新生新派から東映入りした若水美子が初出演する。色彩はイーストマン東映カラー。
伏見橦木町の遊女薄雪太夫と呉服屋の手代美之助は末を契った仲だった。だが積る逢瀬に美之助は店の金を費い込み、それを達引く薄雪の借金はかさむ一方。慾に目のくらんだやり手のおくには二人に殊さら冷たく当り、加えて「薄雪は鰤千匹の代金じゃ」と強引に薄雪を身受けしようとする鰤大尽の横車もあって、追いつめられた二人は精霊送りの盆の夜、伏見の古沼に入水自殺を計った。だが思い掛けずも一人生き残った美之助は、帰らぬ薄雪の上を想って、母おときの慰めにも心は虚ろだった。それから三年、幾度か薄雪の後を追おうと死を決した美之助も、おときの切な願いに立ち直る決心を固めた。美之助はある日御室の花見で酔いどれ武士にからまれた千万長者丹後屋の娘お花を救ったことから、彼女に慕われる身となった。大恩あるしま屋喜助から申し入れて来た丹後屋養子の件も、美之助は薄雪に義理立てして断ったが、病気の母に口説かれ遂に三々九度の盃をあげた。しかし契りの夜、ふと薄雪遺愛の懐ろ鏡を手にした美之助は、その中に怨むが如き薄雪の姿を見て愕然とした。新夫婦の床には毎夜怪異が起り、薄雪への思慕を絶ち切れずお花と夫婦の契りも交すことなく日毎やつれて行く美之助を心配した丹後屋治右衛門は、遠縁の竹之助らに命じて、一日、祇園に宴を張らせた。お花に横恋慕する竹之助は丹後屋の身代をとの下心から美之助を接待したが、美之助は一人酔いしれるだけだった。だが、かつて薄雪と睦言を交した遊女屋“雪巴”で目覚めた美之助は“黒髪”を舞う薄雪大夫の姿を見た。彼は薄雪の執念に引かれて雪の道を歩み続け、伏見の古沼の中へ吸い込まれるように消えて行った。
美之助
薄雪太夫
おとき
しま屋喜助
丹後屋治右衛門
娘お花
乳母きよ
おせん
やり手おくに
幇間多幸八
幇間鳶七
浮寝太夫
白鷺太夫
音羽太夫
鰤大尽
松之丞
竹之助
酔った侍林
酔った侍大林
酔った侍小高
少年与吉
若い者源七
引舟A
引舟B
祇園の女将
来客甲
来客乙
来客丙
手代
甘酒茶屋の女中