萬屋錦之介
獅子丸一平
愛憎流転、数奇な運命の剣と恋に、悲哀限りなき逆境の詩を綴る獅子丸一平もここに完結を迎える。川口松太郎の原作から「髑髏銭(1956)」の結束信二が脚色、「ふり袖太平記」の萩原遼が監督、同じく吉田貞次が撮影を担当する。主な出演は「曽我兄弟 富士の夜襲」の中村錦之助、高千穂ひづる、「海の百万石」の千原しのぶ、進藤英太郎、「水戸黄門漫遊記 鳴門の妖鬼」の喜多川千鶴、その他原健策、中村歌昇、小沢栄、本松一成、山手弘、片岡栄二郎など。
第四部・危し!獅子丸一平--盲目の一平を、朝廷に対する幕府の暴政を怒る九州倒幕派諸大名は、老中松平伊豆守の厳命を受けた長崎奉行与力と、阿蘇代官の手から武力にかけてもかばわんと意気込む。影響の拡大を恐れる一平は伊豆守に逢うべく警固の役人と江戸へ発つ。彼を案じる猿投山の母茂や弟達。夢に危難を知った進吾は山神から「父光春の幼馴染み、大奥の久米川に危急を告げろ」と言われ、弟達は江戸へ。狩りに出た将軍家斎を捕え、引換えに伊豆守から兄一平の身柄を受取る。伊豆守は酒井讃岐守を所司代に据え禁裏警備に狂奔。故郷雪城へ向う傷心の一平は途中、誤って断崖から転落。だが愛宕山の武芸神の力で視力を回復し、父の遺品大文字を握り、美仁親王の密命を帯びる聖護院執当覚持や弟達を伴い、帝の危難を救おうと再び京へ上る。所司代の暴力から逃れようとした帝は捕吏の剣客間瀬城介に捕われたが、一平は激闘の末救出し京の市民は狂喜。ある日、一平は江戸へ戻る途中の千代野に会うが、所詮は結ばれぬ二人の仲。聖護院にこもる一平に、酒井は雪城の母や弟達を囮に召し捕ろうと決心。そこへ戻った元所司代の子阿部由景は城介共々、一平に果し合いを申込む。教王護国寺の境内で抜き合わす一平と城介、聖護院の山門を叩く肥後の不知火姫。一方雪城に乱入する松平の軍勢……。第五部・獅子丸一平・完結篇--激闘数刻、獅子丸は城介を倒すが、不知火姫の叫びに由景と交えた刃を引く。姫は甲斐家再興の願いが叶い東下の途中、一平を訪れたのだが、共々江戸に下る旅すがら激しく恋し合うようになる。一方、茂母子は伊豆守の軍勢に追われ、京へ辿り着いたが、一平は居ない。江戸、甲斐家では将軍家の血筋要七郎君を当主に迎えることとなり、大奥の千代野付添の上、本国肥後へ。吉報に不知火は喜ぶが、姫に尽した八剣士が自らに憎悪を抱くと知る一平は暗然。しかも要七郎護衛の途次迎撃する八剣士の一人を斬り、不知火の夫にはなれぬと夜空を仰ぐのみ。話変って美仁親王と覚持は気分すぐれぬ帝を一平に逢わせて慰めようと計るが北野川公久は愕然。一平の身替り健介は御所への途中を襲われ死亡、一平は単身、北野川の邸に乗込み公久を斬る。追われる途中、とある寺で千代野と不知火姫が肥後へ発つ前、自らへの想い出に立ちつくす姿を見た一平は淋しくその場を去る。動転した所司代の軍勢は聖護院を包囲し、これに対抗して勤皇派九州各藩も立つが、「力と争いの中に真のやすらかさは得られぬ」という一平の言葉に、両軍は粛然と武器を下す。程なく一平は母茂や弟達と、懐かしの猿投山へと戻って行ったのである。
獅子丸一平
不知火
千代野
茂
松平伊豆守
執当覚持
閑院宮美仁親王
井戸佐久之介
佐々木源之進
油井政守
小弥太
健介
東馬
欣弥
徳丸
進吾
将軍家斎
山神
久米川
酒井讃岐守
間瀬城介
茂右衛門
北野川公久
阿部由景
隠れ家の老僕
宮地左太夫
公卿
甲斐広康
岡田万蔵
菊地右門
杉山喜内
根室次郎太夫
石塚河内
鳥居左一右衛門
公久邸の番士
島津家の重臣
鍋島家の重臣
立花家の重臣
要七郎
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