長谷川一夫
鼠小僧次郎吉
さきに公開された「鼠小僧忍び込み控」の好評に応え、長谷川一夫主演の新人気シリーズとして登場する。脚本は「眠狂四郎無頼控」の小国英雄、「続花頭巾」の田坂勝彦が監督し、同じく武田千吉郎が撮影を担当する。主な出演者は「銭形平次捕物控 まだら蛇」の長谷川一夫、「いとはん物語」の小野道子、「編笠権八」の角梨枝子、「新・平家物語 静と義経」の浜口喜博、「編笠権八」の夏目俊二、ほかに三島雅夫、十朱久雄、山茶花究、小堀誠など。
江戸北町奉行小笠原長門守の息女琴姫は大目附松平妥女正の次男と婚約。結納の品として家康より下賜の松平家重宝“稲妻の鎧”が運び込まれた。だが、公務のためその夜外泊した長門守帰宅の折、用人天野文太夫が開けた鎧ビツはカラ、中に「鼡」と記した紙片が残されていた。さてこそ怪盗鼡小僧次郎吉の仕業。鎧は恒例に従い、新春には江戸城内に陳列せねばならず、北町奉行一同、与力筆頭佐久間源之進始め大騒ぎである。父常七、長の病のため、代って十手を握る女目明しお仙。琴姫の信頼厚きを見込み、慰めてやってくれと長門守の言葉。そこに現われた鼡小僧は「私の仕業じゃないが濡衣を晴らすため盗品を探そう」と言い捨て姿を消す。後を追ったお仙は相手を見失う。そこに現われた同じ長屋の幼馴染、兄哥風の男次郎吉。かねて憎からず思っていたが、彼の髪についていた松の枯葉にお仙は考えこんでしまう。その夜、小笠原邸では、鎧はまだ邸内にあるに違いないと必死の探索。お仙は偶然、元の箱に収った鎧を確かめに来た琴姫の腰元八重を目撃。八重は「姫様には近習頭平田数馬という思う方がおいで、そのため少しでも縁談を延そうと鎧をかくした」と告白。事件は解決とみえた翌日、松平家用人相良甚右衛門が鎧の無事を確かめに来る。数馬が箱を開けると中は又カラ。甚右衛門が怒って帰った後へ南町奉行同心氏家鹿十郎という男が事件探索を応援に来る。お仙の眼には、どうやら鼡と瓜二つ。だが氏家は委細構わず、先刻の甚右衛門がお抱え力士荒岩を伴い来訪した際の仕草を今一度実演させた上、姿を消す。立騒ぐ一同は、一室にあった結納金二千両の紛失と、鎧箱に押しこめられた文太夫の姿を見出す。その背に“松平の奸計に与した逆臣”との貼紙。鎧紛失を長門守の落度として職から追い、後に妥女正を据えようという甚右衛門らの企みはここに露見。松平屋敷へ忍込み悪謀を伏せておく条件で二千両を貰ったと甚右衛門に一札書かした次郎吉は早速、常七へ大鯛を送り届ける。彼を追うお仙も鼡小僧の侠気に捕繩も意味なく、仲睦じく連れ添う先は飲み屋の軒行灯。
鼠小僧次郎吉
お仙
琴姫(長門守息女)
花風(相撲取り、実は鼠小僧の乾分)
戸田数馬(長門守近習頭)
八重(長門守腰元)
小笠原長門守(北町奉行)
天野文太夫(長門守用人)
吉岡新五郎(南町奉行所同心、実は鼠小僧の乾分)
常七(お仙の父)
相良甚右衛門(松平家御用人)
偽の和尚(鼠小僧の乾分)
空念和尚
伝吉(目明し、実は鼠小僧の乾分)
服部久蔵(北町奉行同心)
佐久馬源之進(北町奉行筆頭与力)
老自身番
駕かきA
南村一平(奉行所書役)
安藤兵馬(松平家家臣)
半次(北町奉行目明し)
下ッ引の三太
駕かきB
黒装束の男
大崎(奉行所近習)
真田(奉行所近習)
腰元楓
腰元弥生
[c]キネマ旬報社