花岡菊子
里見厚子
「近くて遠きは」の猪俣勝人と、鈴木岬一のオリジナル・シナリオを「死刑囚の勝利」の志村敏夫が監督した、母性愛に絡むアクション・ドラマ。撮影は「美男をめぐる十人の女」の岡戸嘉外。主演は「明治天皇と日露大戦争」の中山昭二、松本朝夫、「剣聖 暁の三十六番斬り」の前田通子。ほかに花岡菊子、三ツ矢歌子。
里見文彦は社会改革の思想を信奉して秘密組織に入り、本部の上級工藤の指示で紙芝居による工場地帯の子供たちの教化を受持っていた。ある日、紙芝居を終っての帰りに、彼は誰かに尾行されていることに不安を感じ、ようやくの思いで、同志の女谷崎みどりのバー「エコー」に飛込んだ。尾行者は、かつて廿七年のメーデーの時、文彦のプラカードで片眼をつぶされた警官松岡であった。松岡は、今は公安調査庁に勤務しており、皮肉にも文彦の兄高志の部下だった。高志は松岡から弟のことを聞き愕然とし、家で文彦をなじる。全てが明るみに出た文彦は運動に身を打込もうと家出した。高志は母の落胆を見て、連日松岡の協力を得て文彦の行方を探した。そして数力月、文彦は港湾関係の仕事をやっており、しかしその背後関係には強力な密輸団のあることを探知した。この頃文彦は「エコー」のみどりと恋仲になり彼女から密輸の仕事を自分がやっていることを知らされ、自己の行動に疑惑を持ち始める。そんな時彼は密輸の首領岩田の謀略で資金の使い込みのヌレ衣をかぶせられたが、本部の工藤に岩田の罪状を告げる。工藤は彼に岩田を抹殺しろとピストルを渡した。事の重大さを感じたみどりは里見家に急報する。仕事の露見を知った岩田は逸早く海上に逃れようとした。それを追い詰める文彦。みどりの報で高志は文彦に追いつき止めようしたが、文彦は兄を突きのけた。そこへ母厚子も駈けつけた。だが文彦は早や岩田たちの船に。彼女も単身これを追うが、ついに文彦の筆銃は火をふいた。--数日後文彦の裁判は開かれ、事の発覚を恐れた工藤らの弁護人買収で情勢は組織的に有利に展開したが、母親は敢然と文彦の有罪を主張した。互に見つめ合う母と文彦の眼には真の愛情がただよっていた。
里見厚子
里見高志
里見文彦
谷崎みどり
瀬川ゆり絵
工藤祐作
工藤の妻智子
岩田誠一郎
松岡調査官
剣持部長
調査庁女事務官
毛利
同志
クラウン商会女主人
船員
酒を飲む男
酒を飲む男
裁判長
検事
弁護士
新聞記者A
新聞記者B
新聞記者C
新聞記者D
看守
老紙芝居屋
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