フランキー堺
松木徹夫(ニュース・キャメラマン)
水野肇・小笠原基生の原作を、「弥次喜多道中記」の笠原良三が脚色、「大当り狸御殿」の佐伯幸三が監督、「恋は異なもの味なもの」の遠藤精一が撮影したもので、ニュース・カメラマン故松井久弥氏をモデルとした異色篇。主演は「母三人(1958)」のフランキー堺、「弥次喜多道中記」の淡路恵子をはじめ、佐野周二、仲代達矢、新人吉行和子。
昭和二十一年--戦後の混乱と荒廃の真只中に、元ニュース・カメラマンの松木徹夫は、戦地から復員してきた。品川駅頭に迎えにきた妻の久美子や、取材にきた先輩カメラマンの姿をみて、彼は再び昔の情熱を呼びさまし、報道映画社のカメラマンになった。妻と二人の苦しいながらも、楽しい生活を築きながら、松木はニュース・カメラマンとしての生き甲斐を、激しい情熱を燃しながら感じていた。下山事件でのスクープも、松木のファイトの賜だった。一たびアイモを持った彼は、他人では出来ない離れ業もやってのけた。沖合で炎上する油漕船に、小舟を乗りつけ、沈没寸前の船上で決死の撮影をして、みんなをアッといわせたのも彼だった。いそがしい仕事のあい間には、出産間近かの妻と散歩をしたり、新しい自分たちの家の計画をたてたりした。しかし、メーデー事件の日に、撮影に熱中したあまり、乱闘にまきこまれ、松木は大怪我をした。心配のあまり、久美子は山田部長や先輩の小林に頼んで、松木の職域を変えてくれと頼んだ。その後、不本意な風物ルポなどを撮っている松木の表情は、なにか浮かないものがあった。そんな彼も一たび国会乱斗などの場面に出会すと、再び元の我を忘れた活躍ぶりを示すのだった。元気な夫を見る美代子は、カメラマンとしての使命を理解し、社の後輩原と、編集部の飯田マサ子の結婚を持ちかけられて、心から賛成するのだった。親探し運動の取材で孤児院に行った松木は、吾が子の姿を探す母親の姿に、溢れる涙でファインダーを曇らせながら、真のニュース・カメラマンの意味を知った。その頃、郊外に待ちに待った自分達の家が建った。しかし、クリスマスの夜、お土産を待つ子供らの前に、松木は二度と帰らぬ人となった。その日、引揚げ列車の取材に行き、線路に降り立った彼は、後からきた貨車にはねられてしまった。翌年の春、故人の功績にブルーリボン特別賞が贈られた。会場に集る人々には、松木カメラマンの名前を知る人は少く受賞した俳優たちだけに盛んなフラッシュが浴せられていた。その中で、今は一本立ちになった原が唯一人、着席していた久美子にアイモを向け、再び華やかなスターの中に戻っていった。そんな姿をみた久美子は「あの人も生きていたら、きっとああでしょうね」と、亡き夫の面影を見出して、つぶやくのだった。
松木徹夫(ニュース・キャメラマン)
松木久美子(徹夫の妻)
松木隆(長男・三歳)
松木(七歳)
松木明(次男)
山田(製作部長)
小林(キャメラマン)
原(キャメラマン)
川崎(キャメラマン)
ドンちゃん(キャメラマン)
小山(キャメラマン)
大木(キャメラマン)
後藤(企画部員)
長谷川(企画部員)
関口(企画部員)
飯田マサ子(編集部員)
北村(女事務員)
森(他社のキャメラマン)
B(他社のキャメラマン)
C(他社のキャメラマン)
D(他社のキャメラマン)
アパートの主婦
看護婦(松木の病院)
赤線の女
船員A(宗谷)
船員B(宗谷)
相談所の先生
院長
父親
看護婦(産婦人科)
看護婦(産婦人科)
平さん(運転手)
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