大木実
島原英夫(仙波)
「真昼の惨劇」の水上伸郎の原作を、瀬川昌治・峰竜太が脚色したもので、浅草歓楽街を舞台にしたアクション・ドラマ。監督は「ぶっつけ本番」の佐伯幸三、撮影は植松永吉。「顔役(1958)」の大木実、「荒城の月(1958)」の山田百合子のほか、小坂一也・瞳麗子・菅井一郎・沢村貞子らが出演する。
--東京、浅草。その暗黒街を支配する顔役・綿貫の賭場から、ドサクサまぎれにチンピラ健太は札束と花札の切れ端をくすねてきた。この花札の切れ端は一億円の麻薬密売取引の割符だった。警察は佐藤刑事に命じ健太を追求させた。綿貫も、刑務所を出たばかりの殺し屋・仙波を雇った。大阪では札つきの兇悪なやくざという噂だ。得意は拳銃の早射ちだ。健太は綿貫らの恐喝に抵抗した。彼と同じみなし子のレヴューガール・千鳥は彼の身の回りの世話をやく。が、彼は千鳥の踊り子仲間はるみを幼い時から慕っていた。彼女の父・藤作は花篭遊園地の所有者だったが、敗戦のドサクサに綿貫に奪われたのだ。今は長屋住いの身の上だ。はるみを大阪の劇場から引抜きに来たが、彼女は応じなかった。浅草が好きなのだ。健太は彼女に愛を告白したが、千鳥は舞台をやめて行った。例の取引が成立すれば、大量の麻薬が街に流れるだろう。おたみ婆さんは彼を説き、花札を警察に届けさせようとした。が、健太は花札を使ってはるみのために遊園地を取戻そうと思っていた。遊園地の権利書と交換に花札を渡すと綿貫に申し出た。綿貫は無効に近い権利書を持ち、健太は偽の花札を……。共にそれがバれ、取引は成立しない。仙波は業を煮やし、ブローニングを片手に健太を追った。健太が警察に花札を届ける決心をしたとき、仙波が飛びこんでき、花札を奪い去った。健太は彼を追い綿貫の事務所へ行くが、彼を待っていたのは仙波のブローニングだった。彼は健太を拳銃でおどし、近くの露地へ引きたてた。が、彼が内ブトコロから出したものは警察手帖だった。仙波は麻薬捜査のための囮刑事だったのだ。二人は協力して綿貫ら悪人を逮捕し、浅草を少しでも明るい街にすることができた。
島原英夫(仙波)
佐久間健太
秋月はるみ
紅千鳥
佐藤刑事
山田たみ
綿貫長蔵
大川
鉄
三公
藤作老人
森川支配人
中華料理店主
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