大川橋蔵
紅権八
「喧嘩太平記」の鈴木兵吾の脚本を、「剣は知っていた 紅顔無双流」の内出好吉が監督した時代劇で、撮影は「若君千両傘」の山岸長樹。「不知火小憎評判記 鳴門飛脚」の大川橋蔵が紅権八、「喧嘩太平記」の市川右太衛門が花川戸長兵衛を演ずるほか、大川恵子・長谷川裕見子などが出演する。
--姫路城中の御前試合で、無名の長州浪人・紅権八は、姫路藩剣道指南・棟方鉄心と対決し、相討ちの判定で引き上げた。町はずれの地蔵河岸で彼を鉄心の門弟が待ち受けていた。排他的な藩習から指南番の雪辱を期したのである。権八は止むなく闇をはらった。二、三人がつんのめった。その中に、無謀の闇討ちを制止しようとした鉄心と、闇討ちの首謀者・稲田辰之進が入っていた--。鉄心の娘・比呂恵と辰之進の弟・辰馬、富士馬の三人は京へ向ったという権八の後を追って仇討の旅へ発たねばならなかった。武士の家のならいである。京の街で、権八は酔った武士にからまれている美しい武家娘を助けた。そのまま、別れたが、娘の姿が権八の胸に残った。娘は見知らぬ権八を父の仇と狙う比呂恵であった。比呂恵は権八を仇と知り、愛憎の相剋に悩んだ。京の真葛が原、江戸へ向う道中の二度とも、権八は襲ってきた三人をそのまま、逃げだす以外なかった。江戸の船宿・鮒源の二階に、侠客花川戸長兵衛は知り合った権八を客分としてかくまった。彼は権八の純粋さに惚れこんだのである。権八はいつか深川芸者・小夕と結ばれた。浮名がたち、辰馬らと姫路江戸屋敷の若侍十数名が襲ってきた。権八はやむなく応じ、富士馬を斬り伏せてしまう。比呂恵はなすすべを知らぬように立ちつくした。小夕は権八の比呂恵への愛をねたんだ。彼を愛すあまりである。彼女は権八を辰馬たちの待ち伏せる材木河岸に導いた。権八は相手をなぎ払い、比呂恵を求めて走った。「あなたを苦しめて生きるのが辛い」権八は彼女に命を捧げるといった。比呂恵は権八の胸にくずおれた。「故郷も家もいりませぬ」二人は死出の旅に発とうとする。が、長兵衛が現われ、二人を説き、生き抜くことを決意させた。辰馬たちが権八を求めて駈けつけた。長兵衛がさえぎり、辰馬たちは気勢をそがれて引退った。--ひしと抱き合った権八と比呂恵の道行を、月が美しく照らしだした。
紅権八
棟方鉄心
棟方比呂恵
老僕・治助
稲田辰之進
稲田辰馬
稲田富士馬
金田弥一郎
坂下三郎太
和尚
芝山
戸梶喬四郎
相良平太夫
花川戸の子分勘太
飛鳥
松田屋番頭喜八
おとよ
入江文吾
船頭
佐七
おかね
小夕
花川戸長兵衛
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