桑野みゆき
岩崎チヨエ(仕上工)
早乙女勝元作の「ハモニカ工場」を映画化したもので、北千住の小さなハモニカ工場を舞台に、働く若い者たちの恋愛を謳歌したもの。脚色は馬場当・山田洋次が共同であたり、「野を駈ける少女」の井上和男が監督、「赤ちゃん颱風」の森田俊保が撮影した。桑野みゆき・山本豊三が主演した。
東京の片隅、荒川放水路に浴った北千住の工場街。そこにある小さなハモニカ工場も、ナベ底の不景気風で屋台骨が傾いていた。惣菜天ぷら屋の娘、チヨエは仕上工で卓球がうまく、人気者だ。老職工の息子・正一は、ハモニカの内部に弁をとりつける波動工である。彼は、ある日作業中のハモニカから「今月の三十一日は私の生れた日です。私はこの日一番素晴しいものを正一さんに贈りたいと思います」と書かれた紙片を見つけた。差出人は、男女対抗の卓球大会の日に、ようやく判明した。勝ち残ったチヨエと、最後の挑戦者正一を見比べて、仲間の金之助が、「やれよ、相手は十月三十一日生れの好敵手だぞ」と叫んだからだ。これがきっかけとなって、正一はチヨエと親しさを増した。正一の先輩職工・石田は、食堂の給仕ハルと一緒になれなかった。すべては低い賃金のためだ。ハルは家族の犠牲となって、川向うの自転車屋に嫁いでいった。低賃金の被害は石田ばかりではない。正一もチヨエの誕生日に贈るオルゴールを買うためには、連日の残業で身を削らなければならない。その頃、二回に亘ってハモニカの盗難事件が起った。犯人は、生活難と病に苦しむ横田だったが、彼は社長の息子に誘惑されたのだ。暴言を吐き続けた社長の面目は丸つぶれだ。--チヨエの誕生日。だが、生産手当が遅れたため、正一はオルゴールを贈れなかった。しかしチヨエは明るい顔で、白い紙包みを取り出した。正一が紙包みを開いていくと、二つに折った紙片が出て来た。それには“好き”とただ二つの文字--。チヨエは、正一の前から走り出した。
岩崎チヨエ(仕上工)
チヨエの母かね(惣菜天ぷら屋)
チヨエの弟信二(中学生)
チヨエの弟三郎(小学生)
鈴木正一(波動工)
正一の父松三(職工)
正一の母
正一の姉
石田善介(波動工)
今井ハル(食堂の給仕)
横田功(波動工)
安藤金之助(波動工)
金之助の父
金之助の弟
田中銀平(機械工)
銀平の父兵衛(検品係長)
小島伊作(コジマバンド社長)
伊作の息子透(大学生)
食堂のおかみ(大衆食堂ヤマニバー)
沢田なみ子(仕上工)
近藤幸子(仕上工)
良子(仕上工)
光枝(仕上工)
岡田(機械工)
中年の工員(機械工)
ハルの夫(自転車屋)
工員一
工員二
工員三
女工一
女工二
女工三
女工四
鯛焼屋のおばさん
[c]キネマ旬報社