伊藤雄之助
虎谷専造
サンデー毎日所載の小島政二郎の「ママ信じてよ」を甲斐久尊が脚色したホーム・コメディ。「点と線」の小林恒夫が監督し、高梨昇が撮影した。
わたしのパパの専造は産婦人科で、気難し屋のガリガリ亡者の締り屋です。貯金が唯一趣味らしい。ママの美沙子はよくいえば貞婦型で、つまりなにごともパパとご相談して--なので、見ていて歯がゆいくらいです。わたし--一人娘の摂はぜったいにママの味方よ。ママを家にばかり閉じこめておくのはかあいそう--手初めに、わたしはママをスキーにひっぱりだすことにした。パパをペテンにかけて。わたしはボーイフレンドの実平君(目下大学受験で猛勉中)と山の研究グループという名目でスキー場へ先発し、彼に先生を装わせた手紙を家へ書かせた。わたしが手のつけられぬお転婆で、至急引取りにきてくれと。ママが迎えに出されたが、スキーを楽しんでいるうち、若い頃ローケツ染めを習ったという白井先生に会ったのです。今は商業デザイナーの大家。二人はどうやら意気投合したらしい。帰ると、パパの大眼玉が待っていたが、わたしの涙の名演技でチョン。--わたしはママと白井氏を度々会わせてやりました。あんなガリガリのパパなんかと、ママ別れちまえばいいんだ。ママは白井氏のすすめでまたローケツ染めを始めて、青春をとり戻した。--ある日、わたしはパパが病院から女の人と人眼を忍んで抜けだし、アパートへ入るのを見た。最低ネ。ママは白井氏とドライブしたり、ローケツ染めの展示会を開いたり、女学校の同窓・踊りの師匠の染香さんとお酒を飲んだり、株を買ったりして、そうとうな発展ぶりです。ママ、白井氏と結婚すればいいのに。--が、わたしはパパを誤解していた。パパは女の人を囲っているのではなく、恩人の娘・千津子さんが子供の病気で困っていたのを助けたのだった。それに、パパのケチも、病院を建てることとわたしの結婚のための倹約とわかったのです。パパ、許して。ママはパリに招かれた白井氏と共に、旅立つのではないかしら。--でも、それはわたしの取越し苦労でした。二人は互いに信頼し合っていました。ママはわたしがパパの愛情に目覚めるのを待っていたのです。ママの株でもうけたお金はパパの病院の建築費に当てようとみんなで相談しました。--実平君もめでたく大学受験に成功したのです。
虎谷専造
虎谷美沙子
虎谷摂
白井譲
坂根実平
染香
若宮
千津子
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女学生
女学生の母親
商店の店員
白バイの警官
ヤマカンの鉄
井村
坂本
デザイナー
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