根上淳
瀬川定夫
外山凡平の脚本を、「母の旅路」の清水宏(1)が監督した母もの映画。撮影は「秘めたる一夜」の石田博。
水上バスの運転手を父にもつ瀬川道夫は、母が死んでから父との二人暮しだが、可愛がっている伝書バトのデデもいるし、別に淋しいとも思わなかった。そのうち、道夫に新しいお母さんが出来ることになった。新しい母はエミ子という妹をつれてやってきた。家の中は急に賑やかになったし、母も道夫にやさしくしてくれたが、道夫は何だか変な気持だった。父のひざでエミ子が甘えていたりすると、以前のように、グローブが破れてもすぐに父のところに直してもらいに行けなくなった。それに父も変に道夫のことを叱ったりする。そんな時には、道夫は家の前の豆腐屋のおじさんの所に行って御飯をごちそうになったりした。エミ子が、母の作ったドーナツを自慢して、母のことをほめたりすると、前の母親の方がずっとよかったなどと思ったりもする。母のおくりもので、今は形見になってしまったハトのデデを見ると、胸が何だか痛いような気持ちになるのをどうしようもなかった。ある日、道夫が学校から帰ると、ハトのデデが巣箱の中からいなくなっていた。大切なデデを見つけるために、道夫は夢中で家を飛び出した。その晩、行方の解らなくなった道夫を探して、父や母、豆腐屋のおじさんたちは大騒ぎした。さいわいに道夫は警察の手によって無事に保護されていることが解った。道夫を迎えに、父は一人で出かけた。家への夜道で、父と二人だけで久しぶりに歩くのを道夫はよろこんだ。父と子は星空の下で話しながら歩いた。「お母ちゃんがこないほうがよかったと思っているんじゃないのか」という父の問に今は道夫は、「そんなこと思ってないよ」と、はっきり答えるのだった。
瀬川定夫
瀬川道夫
高田園子
高田エミ子
大木恭助
大木ふで
大木慶子
お藤
お藤の亭主
吉沢専務
水上バスの助手山村
小学校の教師
小学校の小使
[c]キネマ旬報社