市川右太衛門
三河団十郎
市川右太衛門のお役者やくざもの。川口松太郎の原作を「いろは若衆 ふり袖ざくら」の共同執筆者・加藤泰が脚色し「無法街の野郎ども」の小沢茂弘が監督、「右門捕物帖 片眼の狼」の伊藤武夫が撮影した。
江戸の名題役者七代目市川団十郎は、上方興行におもむく途中、知立の宿で自分と同じ紋所を使っている土地の役者三河団十郎を見て腹を立てたが、相手の気っぷに惚れて、一年後に舞台の上で勝負を競う約束をして和解した。生れついて一本気の三河団十郎は太夫元文蔵や娘お藤を残して修業の旅に出た。かねて文蔵の身代を狙っていたやくざの鬼薊の権次は、これを機会にお藤を手に入れようとして失敗、これも知立の宿を逐電した。旅に出た団十郎は狂言自殺で自分をだまそうとした平田という浪人と斬りあっている時、弟の竹三郎の悪い噂を耳にした。もともと彼は侠客佐野屋一家の長男で、本名を清次郎といったが、弟にあと目をゆずって家出していたのだ。その弟が御油の大五郎に糸をひかれる芸者〆蝶によって骨抜きにされているという。早速団十郎は故郷豊川の土をふんだ。ところが〆蝶は竹三郎を心から慕いながら、大五郎と手が切れぬのを悩んでいる女だった。彼女に一時弟と手を切らして、団十郎は土地をさった。だが〆蝶の裏切りを知った大五郎は彼女を殺し、罪を団十郎にきせて、その上弟竹三郎を殺した。一味の中には前に知立を逐電した鬼薊の権次もいた。佐野屋の縄ばりを手に入れた大五郎は、権次にそそのかされて文蔵の家を襲って彼を殺し、お藤を追いたてた。やがて二人の団十郎が約束した一年目がやってきた。共演の場所は名古屋若宮座ときまった。折しもこの興行をあてこんで大五郎一派も名古屋に入った。盛大に賭場を開いた彼らは、若宮座に芝居見物にのりこんだ。その大五郎や権次一味の前に、舞台から三河団十郎こと清次郎は、さっそうと現れた。そして偶然会って彼とともにいたお藤を生き証人に、団十郎は、大五郎たち一味に戦いを挑み、観衆の見守るうちに彼等をみごとうちはたした。
三河団十郎
佐野屋竹三郎
お菊
お藤
雁金屋文蔵
長太
市川団十郎
平助
成瀬隼人正
平田深喜
お直
桐竹若太夫
〆蝶
花奴
照代
鬼薊の権次
虎鮫
荒熊
黒雲
御油の大五郎
おるい
八木助左衛門
宮の清兵衛
お杉
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