青山恭二
遠藤節夫
川内康範の原作を、「天狗四天王の逆襲」の銀座八郎が脚色し、「別れの燈台」の森永健次郎が監督した歌謡メロドラマ。撮影は「東京ロマンス・ウェイ」の山崎安一郎。
或る霧深い夜、タクシーの運転手遠藤節夫は自殺しようとした女を救った。その女はチャコと呼ばれる広瀬久子だった。チャコの遺書から彼女は身許不明の孤児で原子病患者であることを知った。節夫は同情を抱き、妹の公子に相談してチャコを引き取ることにした。節夫の様子から公子は兄がチャコを深く愛していることを知った。翌朝、節夫と公子が留守の間に、新聞でチャコの事故を知ったというマダム風の女、中村たまがチャコを訪れた。節夫が帰って見るとチャコの姿はなく、金の小鈴と「悪魔に追われています。御親切は生涯忘れません。……」という置手紙だけが残されていた。悄然とした節夫はやり切れない気持を詩作にまぎらわした。日頃から節夫の詩才を認め何かと激励を与えてくれる作曲家の永井が訪れ、節夫の書いた詩を読んだ。チャコは「ボザール」の親切なマダムに拾われ、そこで働くことになった。チャコは九つの時広島で原爆に見舞われ肉親を失った。十一の時に養女に行き、十九歳の時に義父に挑まれ自殺を覚悟して家出した。その時佐藤という男に拾われた。それが転落の始めであった。神戸を逃げて上京したチャコは或るホテルに働いたが、そこの女主人中村たまに売春を強いられた。再び自殺を計った時に節夫に救われたのだ。節夫の純粋な愛情を知ったチャコは自分の身を恥じて逃げたのだった。二カ月たった。チャコはだんだん明るい表情を取りもどしていった。ある夜節夫が乗せた客は「ボザール」の常連だった。「ボザール」で二人は再会した。チャコの人気をねたむ女給たちは、チャコに辛くあたった。佐藤が「ボザール」に顔を出すようになった。チャコは店を辞めたが、間もなく発熱して入院した。彼女は原子病ではなく、結核だった。節夫は彼女の過去を一切問わず、求婚した。節夫の書いた詩“夜霧に消えたチャコ”が永井の作曲によってレコードになるという知らせが届いた。が、ある時チャコは姿を消した。「節夫さん、チャコの汚れはなくならない……」という手紙を残して。
遠藤節夫
広瀬久子
遠藤公子
波川銀八
永井
ゆたか
しげ子
ユミ
佐藤
青柳
中村たま
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