丘さとみ
西形キチ
紡績工場を舞台に、そこに働く若者たちの青春を謳歌したドラマ。「こだまは呼んでいる」の棚田吾郎と、広渡常敏のオリジナル・シナリオを、「裸の太陽」の家城巳代治が監督し、「旋風家族」の藤井静が撮影した。
紡績工場--今日も精紡機は、轟々と運転を続けている。その歯車の一つのように、女子工員たちもめまぐるしく働く。もちろん、機械にも時々故障が起る。それを修理する保善工の上村は、同じ保善工の高橋と、サークル活動で人形劇に熱を入れていた。上村は、女子工員たちの憧れだった。よねがふと口にしたことからよね、キチ、茂子、圭子、和子の間に約束ができた。上村と、闇取引き、抜けがけの恋愛はしないという約束である。正月休み。南アルプスの白峰に囲まれた村落がキチの故郷である。帰ったキチに、思いがけない縁談が待っていた。キチは、きっぱりと断った。休みは終った。突然一つの恋愛がもち上った。正月の集りが上村の下宿で行われた時のこと、高橋が宣言したのだ。「俺、よねちゃんが好きだ」よねの心は動揺した。二人の心は急速に近寄った。結婚式は保育所でやることになった。「二人の結婚のしるしに、一つのリンゴを噛ってもらいます」という上村の発言と同時に、紐に結ばれたリンゴが花嫁花婿の間に降りてきた。二人はリンゴに飛びついた。が、リンゴは引き上げられた。二人の唇が思わず触れ合った。キチがかげでリンゴを繰っていたのだ。上村とキチの案だった。この案は喝采をあびたが、約束が破られたと茂子たちとの間が気まずくなった。キチの許へ母から便りがあった。例の縁談のことをもう一度言ってきたのだ。思いがけない災難がキチを見舞った。一瞬の隙に運搬車にはねられたのだ。“私は上村さんが好きだ”キチは夢の中でいくども叫んだ。よねはキチの苦しい立場を三人の友に訴えた。茂子の口許がほぐれると、四人は勢いよく病院へ走った。--轟々と回転する精紡機。その間を走る無数の糸。それは働く人たちの前途を祝福するかのように、力強い規則の中を流れていく。上村やキチたちの人生はここから始まるのだ。
西形キチ
和田よね
三並玉枝
小川茂子
及川和子
唐沢圭子
佐藤わか
内田ノブ
平山もと
牧野澄子
柳下ひろ
岩間美津子
今泉秋子
田中リン
深田絹代
清水てる子
今井鶴子
上村信吉
高橋清太
権堂精治郎
小田切
工場長
神戸
堀越
塚口
山沢
吉田
西形安次郎
ステ
テル
西川徳蔵
松本仁三郎
機屋のおかみ
高橋の父
高橋の母
よねの父
よねの母
医者
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