岡田茉莉子
水品晶子
婦人公論に連載された石原慎太郎の同名小説の映画化。「広い天」の柳井隆雄が脚色し、「決闘街」のコンビ堀内真直が監督、小原治夫が撮影した。
大学生の水品晶子はラグビー部の岡崎啓介と恋仲だった。学者肌の秀才杉浦も晶子が好きだった。夏休み、青春の歓びを満喫しているつもりなのだが、晶子は何か物足りないような思いで一杯だった。そんな或る日、晶子は黒い喪旗を掲げた三本マストのヨットから降りた初老の紳士を見た。愛する妻を遠い海で失ったという外村義高だった。晶子は白い箱をもつ外村に魅かれた。外村も亡き妻に似た晶子に魅かれた。数日後二人は会った。偶然だったが、晶子は叔母の菊子が何故外村と知り合いなのか知りたいと思った。外村の身辺に漂う秘密をつきとめたかった。秋のある日、晶子は啓介とヨットで海に出た。夕刻から海が荒れた。遭難した二人を助けてくれたのは外村のヨットだった。外村の別荘で晶子の好奇心は満たされた。晶子の亡くなった父と外村はラグビー仲間だった。晶子の母は外村を愛していた。それなのに父と結ばれたのは叔母も外村を愛していることを母は知っていたからだ……と晶子は思った。外村のヨット・セブンシーズ号で晶子の全快祝いが外村と二人きりで行われた。外村が亡き妻と結婚したのは彼女が晶子の母に似ていたからだということを晶子は知っていた。その夜、外村のヨットから帰る晶子を待っていたのは啓介だった。外村と結婚したいという晶子の言葉に啓介は愕然となった。彼には晶子がただの娼婦になってしまったように思えた。外村は啓介に言った。「次の土曜日三人で会おう。その時彼女がどちらを選ぶかで決めよう--」しかしその日外村はいなかった。「いつまでも君を待っている」という啓介の言葉を後に晶子は去った。秋も深まったある日、晶子は外村が病床にあることを知った。晶子の看護は外村を幸福にした。何者にもさまたげられず、二人は情熱の赴くままにくらした。外村の全快を待ってささやかな結婚式が挙げられ、二人はセブンシーズ号に乗って外洋に出た。啓介は敗れた。晶子の思い出も多いビーチハウスに引籠った啓介は、ある日時ならぬ汽笛を聞いた。メインマスト高く黒い喪旗をかかげたセブンシーズ号が入江に入って来たのである。--別荘の門をくぐる晶子の姿はすべてを失った魂なき人のようであった。
水品晶子
外村義高
岡崎啓介
河野道之
河野菊子
杉浦
高岡
婆や
早苗
杉江
山内教授
原田
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