嵐寛寿郎
伴大次郎
林不忘の「煩悩秘文書」を、「海女の化物屋敷」の共同執筆者・杉本彰が脚色、「まぼろし鷹」の山田達雄が監督した娯楽時代劇。撮影は「東支那海の女傑」の平野好美。
◇前篇--遠州相良藩は藩主祖父江出羽守の悪政に泣いていた。ことに出羽守の連日の狩に狩猟地田万里村は全滅の憂目。諸国修業の途中、郷里田万里村に立寄った伴作之進の伜大次郎は、海雲和尚から、出羽守に両親は殺され妹小信も連れ去られたと聞き、一揆を起した農民たちと出羽守の屋敷に斬り込んだが目的を果せず三国ヶ岳の三国神社に身をかくした。大次郎はここで、やはり両親を出羽守に殺されたという江上佐吉、有森利七の二人に会い、剣、金、女色の三つの煩悩の鬼といわれる出羽守に対し、大次郎が剣、佐吉が金、利七が女をもって復讐することを誓って別れた。三年後側室お高の方となって出羽守の胤を宿した小信は、奥方や愛妾お雪の方の敵視の中で悶々の日を送っていた。出羽守の乱行は益々つのり若年寄就任が不首尾に終るや倒幕の陰謀を企てた。そのころ天心法外流の法外道場師範代泉刑部は師範の娘千浪の心が三年前から姿を消している伴大次郎にまだあるのを怒り、千浪を出羽守の慰みものにしようとした。しかし瓢然と現れた大次郎に千浪は助けられ、彼女は父法外と猿の湯に身をかくした。失敗した刑部は評判の義賊煩悩小僧に化けて海産物問屋常陸屋に押人り、娘お縫を誘拐して出羽守に差出した。邸内に監禁されたお縫をお高の方が助け出そうとしたがお雪の方に遮られた。お高の方はお雪の方を懐剣で刺し姿を消した。数日後、猿の湯には、傷を癒すお雪の方がいた。恋慕流しの宗七と名乗り浮名を流していた利七は、お雪の方を見て彼女から出羽守の動静を探ろうと言い寄った。五月五日、この日は大次郎、佐吉、利七の三人が打合せのため三国神社に集る日だった。しかし宗七は現れず、江戸で会いたいという置手紙があった。大次郎らは江戸へ向った。途中、猿の湯に立寄った大次郎は刑部一味に襲われた千浪を救った。一方、江戸深川の長屋に宗七の女房気取りでいるお多喜は近所で発狂しているお高の方を見つけ家に連れ帰った。宗七は変り果てた、この小信を見て法外道場の大次郎のもとへ飛んだ。大次郎は早速、出羽邸に斬りこんだ。後を追った千浪、宗七ともども灯燈通しの奸計で秘密の部屋に閉じ込められた。後篇--大次郎、千浪、宗七を救い出したのは、今は煩悩小僧を名乗る佐吉であった。佐吉は、お縫をも地下牢から救い出した。追手を逃れた大次郎は、暴政に耐えかね田万里村を出て見世物小屋をひらく菊川駒千代の一座に身をひそませた。しかし翌日、宗七の長屋は出羽の岡っ引吉蔵らにとり囲まれ、潜んでいた千浪は小信を連れて田万里村の海雲和尚の手引きで巌光院に逃れた。事の次第は留守で難を免れたお多喜によって大次郎に知らされた。一方、お雪の方から、出羽邸の蔵に鉄砲と火薬が山と貯められてあるのを聞き出した宗七と、出羽藩が各所の金貸業者から多額の金を借り武器を買い集めていることを内偵した佐吉は、これを老中筆頭戸田対馬守に報告した。宗七と佐吉はまた千浪にも連絡をとることに成功、これによって千浪は大次郎と会いに出かけたが出羽守に見つかり、危ういところを現れた大次郎に救われた。しばらくして、お雪は、出羽守が戸田対馬守を斬ろうとしていることを探知、これを宗七に伝えた。翌日、対馬守は襲われたが輿から現れたのは大次郎。彼は対馬守から出羽守の陰謀の証拠を握ってほしいと依頼された。大次郎らは東海道を下る出羽守を追って菊川一座に混りながら遠州相良に到着した。相良八幡の祭の日、城内大広間に設けられた菊川一座の仮舞台で駒千代の手品の相手を買って出た出羽守は、鬼の面をかぶって万年駕篭の中に入った。やがて家臣の拍手に迎えられ駕篭から出た出羽守は面をかぶったままの姿で家臣を従え、密輸の鉄砲を受取るため相良の港にやってきた。船から下されたのは米俵に偽装した数千挺の鉄砲の包み。そして鬼の面をとった出羽守は--意外にも大次郎だった。動かぬ証拠を前に大次郎は、佐吉、宗七、正気に返った小信、千浪とともに見事、復讐の一念をまっとうすることが、できたのであった。
伴大次郎
有森利七
江上佐吉
祖父江出羽守
千浪
小信(お高の方)
お雪の方
泉刑部
山路主計
中之郷東馬
川島与七郎
北伝八郎
中良井備中守
戸田対馬守
お多喜
与助
由公
海雲和尚
弓削法外
川俣伊与之進
常陸屋六兵衛
娘お縫
清吉
伴作之進
妻しの
江上壮吉
内藤十三郎
大杉玄蕃
菊川万之助
菊川駒千代
菊川小千代
石井長一郎
吉蔵
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