久保菜穂子
若月綾子
本年三月に起ったスチュワーデス殺しに材を取ったもの。原作、脚色、監督は「城ケ島の雨(1959)」の猪俣勝人。撮影は木塚誠一が担当した。
日光中禅寺湖畔で、若い女の死体が発見されたのは、三月十日の早朝のことである。すぐ日光警察署に特別捜査本部が置かれた。解剖の結果、死因は扼殺、死亡推定時刻は九日の二十三時から翌日の午前三時の間とされた。被害者はヨーロッパ航空のスチュワーデス若月綾子と知れ、彼女はモンテ・マリオ修道会の信者であった。--大日新聞の新米記者毛利は捜査本部の塩崎刑事を徹底的にマークした。下宿で在日不良外国人を扱ったテレビ番組を見た時、羽田空港の出入国管理事務所に張りだされた注意書と写真が写り、捜査本部の狙いがモンテ・マリオ修道会のダニエル修道司にあると感づいた。三日後、ダニエルは弁護士に伴われ、日光署に任意出頭した。--毛利の恋人早苗が日光にやってきた。本社の島田デスクの妹だが、熱心なカトリック信者で、毛利の記事に大いに不満だった。修道司が罪を犯すはずはないと。--事情聴取で次の事実がわかった。ダニエルはモンテ・マリオ書店の女店員二見静子と交際があった。綾子とは何度か文通した。なかでもロンドンにいた彼女に切手を沢山はった手紙を二度送った。女の行方不明の前日きた速達は彼のものだった。その裏付調査も続いた。六月三日、ダニエルは東武浅草駅で綾子と待合せ、宇都宮の第一ホテルに泊った。聴取は打切られたが、捜査は続き、事件の核心に迫ったようだ。日光光徳ロッジでは、綾子らしい女が八日の夜から丸一日逗留していたことがわかった。今市では、食料品店で食糧を買った外国人がルノーで日光へ向ったことが聞きだされた。東京三田では綾子に似た女が変名で家具を買いこみ、四谷の高級アパートに運びこませた事実が出た。アパートの管理人は写真で綾子だと証言した。--すべての状況はダニエルに不利だ。その時、彼は突然、帰国した。捜査本部は解散した。毛利はこれらの資料をもとにレポートを書いた。はっきり修道司を黒と断定した。彼は島田デスクと早苗のアパートを訪ね、原稿を見せ、憤まんをぶちまけた。早苗は急に身をひるがえし、外へ走り出た。川沿いの道を歩いていた時、トラックにはねられた。--中禅寺湖畔で、毛利は塩崎に話した。早苗が虫の息でダニエルの冒した罪のゆるしを乞うんですよ。--彼はレポートに火を放った。二人はそれが燃えつきるまで、じっと見つめていた。
若月綾子
ダニエル修道司
毛利信一
塩崎刑事
二見静子
大矢根司法主任
町田部長刑事
日光署秋山署長
増田刑事
山岸刑事
持丸刑事
藤井刑事
吉野刑事
池本刑事
牧谷記者
横井記者
佐々木記者
大石記者
品川記者
島田デスク
出口修道司
島田の妹早苗
長谷川弁護士
石井昇之助
石井君子
塩崎の妻みね
塩崎の娘ゆり
出入国管理事務所員A
出入国管理事務所員B
空航派出所警官
浦田警察警官
モーターボートの男
モーターボートの女
救急車係員
宇都官デパート女店員A
宇都官デパート女店員B
宇都官デパート女店員C
日光館の女将
第一ホテルの女中文ちゃん
第一ホテルの女中芳ちゃん
倉庫の婆さん
牧夫
光徳ロッジのボーイ
食料店店主
払下家具店主人
四谷アパートの小母さん
モンテマリオ書店女店員
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