若山セツ子
おスミ
「斬られの仙太」の三好十郎の原作を「四つの恋の物語(1947)」第三話(恋はやさし)の山崎謙太が脚色し、「斬られの仙太」の製作を中止した滝沢英輔が終戦以来初めてメガフォンをとる作品。キャメラは「四つの恋の物語(1947)」第一話(初恋)に次ぐ川村清衞の担当。「銀嶺の果て」に次ぐニュー・フェイス若山セツ子と「素晴らしき日曜日」に次ぐ沼崎勲が主演し、「音楽五人男」の河津清三郎、「地下街二十四時間」の菅井一郎、ニュー・フェイス木匠久美子、アキレタ・ボーイズらの助演。
山奥の農村に年に一度か二度の電報が配達された。その日河鹿村の彦之丞の家では娘おスミと幼なじみの一六との結婚式であったが、東京の工場から一六にすぐ帰ってくれとの報に純真なおスミは快く同意し、後日上京を約束して別れた。父彦之丞は貧しいながら親心からぶたを売り借金を差引く二百円とメン鶏ピイコと少しばかりの米を一六への贈物としておスミに持たせてやった。がおスミは車中で、火つけの嫌疑でひかれて行く夫を信じて後を追うお若に同情して百円を渡し、母の危篤に駆けつけるべく脱走中のサーカスの踊子に残りの百円と、着物を与えて逃がしてやってしまった。おスミはサーカスの仲間に見つけられ警察まで連れて行かれ司法主任に親切も考えものだと諭されたが更に保護室に泊められている人に食べさせたいとお米を提供した。車中でこれらを見ていた復員の山田は子供一人残して妻に他界された上現在の偽まんに充ちた社会をみて、もう何もする気にはなれなかったがおスミを見ているうちに汚れた世の中になおこんなにも綺麗なものが害われずにあるのを知って何かポツと暖い花の香に触れたように感じた。おスミは母を亡くした山田の子供を案じてええ母さんになれやと最後に一ツ残されたピイコまであっさり渡してしまった。こうしておスミは無一物で一六のもとへ嫁入りした。しかし一六はいつまでもその根性を失うなと言って笑ってくれるのだった。
おスミ
父彦之丞
弟五郎
楠一六
馬車屋馬造
電報配達
信太郎
お若
刑事
復員者山田
商人風の男
兵助
綱渡り
金ちゃん
踊子ユリ
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