河村黎吉
清吉
「象を喰つた連中」(池田忠雄と共同)「新婚リーグ戦」の斎藤良輔と、「仮面の街」(新藤兼人・岩沢庸徳と共同)の中山隆三の協同脚本を、「情炎(1947)」に次ぐ渋谷実が監督する。撮影は「深夜の市長」「情炎(1947)」の長岡博之。「情炎(1947)」の水戸光子、村田知英子、「最後の鉄腕」の三浦光子、「消えた死体」の上原謙が主演する。
西陣問屋伊勢重のお嬢さん時子は親が決めた縁組を嫌い、いまミルクホールをやっているお由の所へ、いきなり入り込んできた。お由は隣の扇子屋清吉に頼んで親元へ帰そうとするが、清吉はあべこべに共鳴してお由の迷惑をよそにしばらく泊めることになってしまう。翌朝から早速お由はお嬢さんの連れて来た猫のため、ミルクだの行水だのと動き回され、あきれるお由をよそに時子の傍若無人の生活が始った。まず清吉はお嬢さんからみつばちが儲かると言われすっかり乗気になり人のよい床屋の正六を騙し、資本を出させたが停電のため、みつばちの一群をフイにしてしまい、その穴うめに正六の大切な商売道具の鏡を道具屋に売り、その金を資本に競馬に行くが、それを預った質屋の息子幸一は途中でスリにすられ、元も子もなくした。それを知った正夫は気絶してしまう。さすがに清吉は責任を感じた。表通の荒物屋が田舎に引き上げることになって清吉は早速家主になっている質屋の幸一に娘とみ江を嫁がせ、その後へ自分の店を移したいととみ江に縁談を強いたのでついに引越のドサクサにとみ江は家出をする。実は、とみ江は正六の家に厄介になっている貧乏画家横山に秘かに思いを寄せていたのである。やがてお由の家にいたお嬢さんは親が我を折ったので実家へ帰っていった。清吉だとて何も娘を苦しませるつもりはなく、ただ家の生活のため、ひいては娘のためを思ってやったことである。お由に諭された清吉は戻ってきたとみ江に何も言わなかった。そして今後は心を入れ替えて仕事に励むことを口にこそ言わないが心に誓うのだが、そこは親子の間、お父さんは今日から渋団扇だと空嘘ぶいて笑うのである。
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