横山エンタツ
エンタツ狸
「新馬鹿時代」「春の目ざめ」の本木莊二郎「面影」の井手俊郎の協同製作になるもので、脚本は「戦争と平和」「浮世も天国」「ぼんぼん」の八住利雄、演出は最初新人田尻繁が予定されていたが変更して「音楽五人男」「新馬鹿時代」(山本嘉次郎の応援演出)の小田基義が担当する。カメラは第一回の前田実が担当。「誰がために金はある」「シミキンの結婚選手」に次ぐ柳家金語楼「浮世も天国」に次ぐ横山エンタツ「浮世も天国」「愉快な仲間(1947)」の花菱アチャコが主演し、「音楽五人男」の相原巨典、新人津山ミチ子(この映画でデヴュー)が出演する。なおこの映画は大泉貸スタジオにおける第一回作品。
人間世界にはびこるたぬきの正体を見届け征伐する目的でたぬきの代表に選ばれたのがエンタツたぬきとアチャコたぬき。アチャコは妻サカエが十日ほど前猟師に生どりされたので、彼女の捜索も兼ねて二人は山を下りる。人里近く犬にほえられるが、うまくハンターに化けて難をさけ、犬の持主狸福党総裁大山金兵衛からは新興成金と見られて同党の後援者に祭りあげられる。そして金兵衛の経営する平和ホテルに招じられ大歓迎を受けるが、このホテルは中川こまの亡夫の所有であったのをわずかな借金のかたに金兵衛が取りあげたもので、こまと娘の鳩子は今使用人として使われ、鳩子の恋人事務員の正一は金兵衛の娘孔雀の邪魔で結婚も出来ない気の毒な状態にあることを知った二人は、義憤を感じて鳩子親子のために援助を申出る。二人は金兵衛からホテルを一億五千万円で買うことにきめる。何も知らない金兵衛夫婦は娘孔雀に意を含めて更に二人から金をしぼる目的で、エンタツと婚約させる。一方金兵衛が養狸場も持っていることを知った二人は、そこを訪ねてみるとアチャコの妻サカエを発見する。エンタツ、アチャコ、サカエは木の葉を百円札にかえてホテルを買取り、こま親子の手に返し、エンタツは孔雀との結婚もけってアチャコ夫婦に養狸場の仲間全部を連れて山に帰る。二人の大狸ポン王に対する報告書--人間狸の征伐は人間自身が化かされぬ眼を持つことである。
エンタツ狸
恋人キヌタちゃん
アチャコ狸
妻サカエ
大山金兵衛
妻つる
娘孔雀
小森正一
中川こま
娘鳩子
森川前代議士
[c]キネマ旬報社