伊地知聖子
山下りん
1880年代、絵の勉強のために単身ロシアに渡った日本最初の女流洋画家、山下りんの生涯。監督はドキュメンタリー出身の石侍露堂。出演者はヒロインの伊地知聖子(新人)のみが日本人の他は、全てロシアのヴェテラン俳優である。
1881年のペテルブルグ。山下りんはイコン画を学ぶためひとりでロシアに渡り、ノボデヴィッチ女子修道院で美術アカデミーのヨルダン先生に師事していたが、イコンを油絵と同じ西洋画と思っていた彼女は、そこでの勉強が苦痛になっていた。エルミタージュ美術館を訪れたりんは、ラファエロの「聖母子像」に魅せられる。模写の許可を得てエルミタージュに通いつめるが、このため他の修道女たちの反感と嫉妬を買い、りんは次第に孤立していく。その頃、皇帝アレクサンドル二世の暗殺に加わった大学生アレクセイ、ヨナが復活祭に修道院を訪ねて来た。りんはアレクセイにほのかな思いを寄せていた。しかしある日突然、修道院の方針でりんは外出禁止を申し渡される。彼女は修道院をやめ、再び美術館へ通う。ところが、病に倒れ、失意の中、日本に帰国する。帰国後、りんは死ぬまで西洋絵画に憧れながら、“イコン画家”として人生を歩み続けるのだった。