岩松了
植田
今から百年後の未来、同級生に出会った主人公の奇妙な日常を独特のSF設定と詩的イメージで描く、8ミリ作品「花」で八九年PFFアワードグランプリを受賞した小池隆の劇場用映画デビュー作(第五回PFFスカラシップ作品)。受賞当時の審査員だった市川準が小池の未完成のシナリオに注目し、プロデュースをはじめとする全面的な彼のバックアップを得て作ったもので、監督・脚本・出演の三役を小池が務めた。16ミリ。
地球パトロール軍や“宇宙空港建設予定地”という看板が日常の中に埋没している百年後の未来。知人の告別式に出席するため、知らない駅に降り立った小森は道に迷うが、それを助けた妙に世間慣れした口をきく男は、偶然にも幼稚園時代の同級生・植田だった。植田は、字の読めない小森に宇宙空港建設反対運動を手伝わせたり、虚無的で乱暴な友人・鈴木に引き合わせたりする。わけの分からないまま植田のペースに巻き込まれていた小森だったが、次第に、植田の大きすぎる野望と気の小ささに気づき、なぜか暖かな気持ちを抱いていく。
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