監督
誤審により死刑囚となり、判決から三十四年六か月にわたって牢獄での生活を余儀なくされたひとりの男性を取材したドキュメンタリー。キネマ旬報文化映画ベストテン第二位。
ストーリー
作品中登場する免田栄氏は一九五〇年代殺人罪で起訴され、五一年十二月に死刑が確定された。免田氏は一貫して無実を主張し、五六年熊本地方裁判所は第三次の再審請求に対して異例の再審を決定(確定死刑囚に対しては初めての判断)。だがその後も氏は八三年に勝訴を勝ち取るまで死刑囚として独房の生活を強いられた。小池監督は、免田氏が獄中から世間の人々に宛てて書いた手紙を、再び免田氏に見せ当時の心境をインタビューするという手法で、氏の人間性を引き出していく。画面に映るのは免田氏と小池監督のふたりのみ。自分を支援し続けた人々、父親、そして死刑執行されていった親しい囚人などの思い出を、免田氏は淡々と語るが、その言葉の中に、有限と決められた時間を真剣に生きる覚悟を持たざるを得なかった人間の迫力を感じさせる。死刑制度が論議を呼ぶ昨今、本作品は、死刑を訴えられた囚人も、また人間であるということを人道的に静かに訴えていく。