久保田大貴
政弘
それぞれが持つ“傷”で結ばれた、元ヤクザと不幸な少女の純愛を描くドラマ。CM演出やドラマ脚本を手掛けるもりしげるが95年に製作・監督したものが正式に劇場公開された。主演は「瓶詰め地獄」の久保田大貴と、「未来の想い出 Last_Christmas」の白石美樹。現在部分はカラーで、過去部分はモノクロで描き、それぞれがパズルのように交錯して構成される。16ミリ。
3年前、暴力団組員の政弘と進次は、対立組織の幹部・金田を殺す命令を受けた。進次は直前に逃げ出し、政弘は一人で実行しするが失敗し、金田に去勢されてしまった。その後、ふたつの組織は和解し、政弘は堅気となってスナックを開いて、進次は負い目を引きずりながらなお組織に身を置いていた。そんな今、政弘はサキと出会った。暗い過去を背負うらしいサキは、何度か出入りするうちにやがて政弘のもとに居ついてしまう。サキの手の甲には、涙を流せない代わりに血を流すという傷がある。政弘の下半身の傷を知ったサキは、それを自分と同じ悲しい傷だと言った。このころ政弘は、元兄貴分の上岡からシャブを預かり売人役を頼まれるようになっていた。上岡は組のシャブを横流ししているのだが、金田が薄々とそれに気付いて、政弘の店を探りにやってくる。その時店にいたサキは金田に乱暴され、シャブ漬けにされてしまった。金田が政弘を去勢したことを知ったサキは、金田を殺してしまう。上岡は己の悪事をこの機に隠蔽しようと諮り、サキは組織に追われる身となった。政弘は体の弱ったサキを連れて逃げ、進次は組を裏切って彼らを逃がした。だが進次と暮らすかおりが上岡と通じていて、3人の居場所は組に知られてしまう。追いつめられたあげくかおりが殺され、進次は二人を逃がして上岡たちと対決した。政弘はサキを背負って走り続け、逃げきったその時にはサキは死んでいた。悲痛な思いの政弘は、サキの唇に血の紅を引く。
[c]キネマ旬報社