石丸だいご
遠山トウヤ
死んでしまった少年が棺から抜け出し、過去・現在・未来の時間の流れの中をさまよう姿をサイレント、スラップスティック調で描く物語。名古屋を拠点とする劇団「少年王者館」を主宰する劇作家・演出家の天野天街の初監督作品で、91年から映像製作の企画を進めている愛知芸術文化センターと愛知県文化情報センターの企画によるもの。特に明確なストーリーはなく(脚本もクレジットにはない)、主人公が疾走する様を幻想的に、ノスタルジックに描いていく。出演者は主演の少年の演じる石丸だいこをはじめ、同劇団の俳優たちが中心。16ミリ。
自分自身の「死」に立ち会ったトウヤは、だがその「死」を素直に受け止められずに、止まってしまった「生」の時間から追われて駆け出す。汽車会館映画、居酒屋「XTO」、時計のあった街、海、いつかの団欒の場所、お父さんのような人、お母さんのような人、知っているようで知らない人たち……彼岸と此岸の間にあやうく存在している路地をさまよい始める。彼の道程は行き当たりばったりのようで、「未だ知ることのないドコカ」に向かうために用意された、様々の儀式を通過していくようである。トウヤはその旅の中で、過去・現在・未来をも含めて、奇妙な郷愁を帯びたモノたちと別れを告げるように出会い、通り過ぎていく。そして旅の終わりに待つ自らの「死」までにもサヨナラと告げるように消える。
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