吉澤健
西川行男
十七歳から二十八歳まで、若者のセックスと放浪のロマンを描く。脚本・監督は、新藤兼人の「触角」で助監督をつとめた新人田辺泰志。撮影は仙元誠三他四人が担当。
1960年の初夏からこの物語は始まる。西川行男は南国の町の高校三年生である。温和な父と二人で暮している。クラス・メイトで野性的な魅力を持つ陽子と学校の裏山でときどき抱き合ったりするが、非行少年というのでもなく、また受験勉強に励む優等生でもない。体制と反体制、異端と正統、善と悪、夢と現実……といった発想を否定したところから行男は歩み始める。従って学校や親に反抗することは彼にとってたいした問題ではなく、学校とか家とかはつまらないものであり、教師や親と理解し合えぬのは当然のことなのである。行男は、陽子とのことを密告され、学校を飛びだして大阪の兄のもとに身をよせた。やがて、心やさしい兄嫁の躰を求めてしまう。その直後、陽子と車で墜落死した父の死が知らされる。父が残してくれた教育費をもって、行男は京都の隠れ里に打楽庵という庵を結び、黙黙と修業に励む。ある日、フーテン娘の照子が打楽庵を訪れ、しばらく住みつくがやがて姿を消してしまう。照子にすっかりペースを狂わされた行男は、京の町に降りて、女と酒の甘い生活を始める。それから五年後、バーで働いている行男は、クラス・メイトの光子に邂逅する。やがて二人はアパートで生活するようになり、その生活に入りこんできた光子の男友達、田山、青坂と奇妙な最後の青春を送る。数年後、女への夢を断ち切った行男は、良子と故郷倉敷で世帯を持ち、三人の子供を持つ。とんかつ屋やモーテルを経営し、彼の生活は次第に充たされていく。一九七一年、夢ともうつつともつかぬ、ある明るさにおおわれた廃島に行男はいる。どこからともなく時折現われる病気持ちのストリッパーと、ザリガニを食べ、カクレンボをしては笑っている。流れ者の行男はどこへいくのか? ギターもマリファナもオートバイも持たず、徒手空拳で夢にも現実にも背を向けていったいどこへたどりつくのか?
西川行男
光子
良子
陽子
照子
兄
兄嫁
青坂
良子の母
父
オンナ
幻の男
支配人
性童女
吉田山の女
良子の祖父
陽子の父
監督、脚本、製作
製作
撮影
撮影
撮影
撮影
撮影
音楽
編集
編集
編集
編集
録音
録音
録音
助監督
[c]キネマ旬報社