カルーセル麻紀
鮎川涼子
平凡な生活を願う、成熟した女と、彼女を取り巻く男たちの愛欲を描く。脚本は「女子大生 かりそめの妻」の大工原正泰、監督は「実録ジプシー・ローズ」の西村昭五郎、撮影も同作の山崎善弘がそれぞれ担当。
鮎川涼子は、太腿にあでやかに咲いた牡丹の花を持つ彫り物師の娘である。そんな生まれと牡丹の刺青のため、まともな結婚と暮しを諦めていた涼子だったが、平凡な会社員山西の愛に彼女は引きつけられた。だが涼子には、やくざの池谷というひもがついていた。そこで山西は会社をやめ、退職金で池谷に手切れ金を払った。そして、涼子の事を両親に反対されたために、家を出て涼子と同棲することにした。職と家庭を犠牲にした山西のため、涼子はますますホステス業に精を出すのだった。だが山西は、次第に働く意欲をなくし、今やひも同然の身となり、ギャンブルに手を出していた。やがてそんな暮しに疲れ果てた二人は、お互いに浮気をしてまぎらわす日々を送っていたのだった。ある日、クラブで歌っていた涼子を見て、歌手にしてやるという甘い言葉で彼女に近づく男がいた。今をときめく売れっ子の作曲家・仙波だった。涼子は歌手を夢見て仙波に身を任せるのだった。一方、山西は呑み馬券の代金三十万円を池谷から催促されていた。そこで彼は無断で涼子の洋服や宝石類を全て質屋に入れてしまったが、三十万円にはならず支払いに窮していた。それを知った涼子は、遂に山西にあいそをつかし、仙波を頼り、彼の世話になって、楽しい希望に満ちた日々を過ごしていた。その頃池谷は山西に残金の支払いを執拗に迫り、その代りに一つの提案をした……。数日後山西は、涼子を言葉たくみに誘い、ある家に連れ込んだ。涼子を持っていたのは池谷と数人の男たちだった。いやがる涼子を無理やり裸にして押さえつけ、強姦する男たち。パッと浮き出る牡丹の入れ墨。まわる8ミリカメラ。それはブルーフィルムの撮影だった……。
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