日本の彫刻の世界に、すい星のような輝きを残し、若くして戦没した木彫家高橋英吉の生涯を、記録映画形式とドラマを重ねて綴った作品。製作小島義史。脚本・演出片桐直樹。音楽石島正博。出演江藤潤、友里千賀子ほか。1984年1月完成。35ミリ75分。
ストーリー
宮城県石巻市の回船問屋に生まれた高橋英吉が、昭和11年、東京美術学校へ入学するまでの背景を、残された資料や友人、先輩のインタビューで浮き上がらせる。当時の面影を残す東京上野の谷中あたりからドラマになり、貧乏な下宿で木屑の中でノミを振う英吉(江藤潤)を映し出す。卒業後の作品、彩色本彫「少女像」は新鮮だと評価されたが彼は満足しない。新しい芸術的境地を探ろうと南氷洋の捕鯨船に乗り込み、働く船員の姿をスケッチする。帰国後、「黒潮閉日」「潮音」「漁夫像」は展覧会で特選や無審査出品となり、彼の地位は確立した。まだ三十歳前のことだった。やがて世間は戦時色が強くなるが、時局におもねることなく、ひたすら芸術作品を追い続ける英吉。微笑ましい結婚、そして長女が生まれて二ヶ月、昭和16年10月に出征するまで英吉は「母子像」を掘り続けた。英吉は激戦地ガダルカナル島に赴き遂に還らなかった。
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