クリスティナ・ヤンダ
Dorota
旧約聖書の“十戒”をモチーフに、人間世界の様々な問題、事件、感情、人間関係、運命を描いた10のエピソードからなる連作の人間ドラマ。それぞれ1時間ずつのエピソードで、当初テレビのミニシリーズを想定して製作されたが、ヨーロッパ各国の劇場で上映された。10の挿話はそれぞれに独立した作品となっているが、登場人物はいずれも同じワルシャワ効外の集合住宅の住人で、ある挿話の主人公が他の挿話に脇役として顔を見せる。監督は本作の評価がきっかけで国外に活動の拠点を移し、「ふたりのベロニカ」「トリコロール三部作(青の愛/白の愛/赤の愛)」のポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキ(95年死去)。製作のリシャルド・フートコフスキ、脚本をキェシロフスキと共同で手掛けるクシシュトフ・ピェシェヴィチ、音楽のズビグニェフ・プレイスネルは、いずれも以後キェシロフスキ監督の全作品に参加。全10話中第9話まで、それぞれ異なる役柄で登場する謎の青年はアルテュル・バルシス。ちなみに、第5話と第6話はそれぞれ劇場用長編映画に再編集され、「殺人についての短いフィルム」「愛についての短いフィルム」としてすでに公開済だが、構成やエンディングなどが異なるため掲載した。89年ヴェネチア映画祭国際映画批評家連盟賞、88年ヨーロッパ映画グランプリ受賞。
ワルシャワの病院に勤める主人公の医師(アレクサンデル・バルディーニ)は戦争で家族を失って以来、家政婦を通わせるだけで一人で暮らしている。その朝。上の階に住んでいるドロタ(クリスティナ・ヤンダ)は彼に話したげな様子だった。実は彼女の別れた夫アンドレが瀕死の病で入院しており、その主治医がこの医師なのである。医師が彼女を招き入れると、女は自分の情事を打ち明ける。自分はいま妊娠しており、父親は夫の親友だ。自分はもう若くはなく、おそらくこれが妊娠する最後のチャンスだろう。もし夫が死ぬのならこの子を生むことができるが、夫が生き延びるなら中絶するしかない。医師が病状を伝えることが、子供の生死を決することになる。彼は返答を拒否する。病院に行き、決心しかねたままじっと夫を見つめるドロタ。ドロタは医師の診察室に押しかけ、堕胎するしかないという。医師は夫には助かる見込みがないと仄めかした。ドロタは子供を生む決意をした。数ヵ月後、奇跡的な回復をした夫がベッドから出て医師の診察室に来て、彼に感謝の言葉を述べるのだった。
監督、脚本
脚本
製作
撮影
音楽
美術
編集
音響
字幕
字幕監修
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