ミラスラフ・バカ
Lazar Jacek
旧約聖書の“十戒”をモチーフに、人間世界の様々な問題、事件、感情、人間関係、運命を描いた10のエピソードからなる連作の人間ドラマ。それぞれ1時間ずつのエピソードで、当初テレビのミニシリーズを想定して製作されたが、ヨーロッパ各国の劇場で上映された。10の挿話はそれぞれに独立した作品となっているが、登場人物はいずれも同じワルシャワ効外の集合住宅の住人で、ある挿話の主人公が他の挿話に脇役として顔を見せる。監督は本作の評価がきっかけで国外に活動の拠点を移し、「ふたりのベロニカ」「トリコロール三部作(青の愛/白の愛/赤の愛)」のポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキ(95年死去)。製作のリシャルド・フートコフスキ、脚本をキェシロフスキと共同で手掛けるクシシュトフ・ピェシェヴィチ、音楽のズビグニェフ・プレイスネルは、いずれも以後キェシロフスキ監督の全作品に参加。全10話中第9話まで、それぞれ異なる役柄で登場する謎の青年はアルテュル・バルシス。ちなみに、第5話と第6話はそれぞれ劇場用長編映画に再編集され、「殺人についての短いフィルム」「愛についての短いフィルム」としてすでに公開済だが、構成やエンディングなどが異なるため掲載した。89年ヴェネチア映画祭国際映画批評家連盟賞、88年ヨーロッパ映画グランプリ受賞。
ワルシャワ効外の同じ集合住宅に住むが、お互いに会ったことのない三人の男。とくに仕事もなく町をぶらぶらしている青年ヤチェク(ミロスラフ・バカ)、司法修習期間を終えたばかりで意欲に燃えた若き弁護士ピョートル(クシュトフ・グロビフ)、そして意地の悪いタクシー運転手(ヤン・テルザルフ)。タクシー運転手がタクシー乗り場で夫婦喧嘩をしている夫婦(第2話のドロタとアンドレ)を乗車拒否するのを、たまたまヤチュクが目撃する。ヤチュクは高架道路から石を落として下を走る車にぶつけたり、喫茶店に入ってはフォークを使ってチョコレートムースを窓にぶつけたりと、とくに意味のない無軌道な行動をエスカレートさせていく。その同じ喫茶店で、弁護士になる最後の面接試験で死刑廃止について理路整然と意見を述べたばかりのピョートルがいた。ヤチェクは喫茶店のテーブルの下でロープをいじっているが、すぐに店を出ると、タクシーを拾う。それは例の運転手の車だった。ひとけのない効外に車を向かわせるヤチェクは突然ロープを運転手の首にまきつけ、さらに大きな石でその頭を砕いた。なんの動機もない残酷な衝動殺人。この弁護を引き受けたピョートルは持論の死刑廃止論で弁護を計る。裁判官は彼の理論を評価しつつも、これは現行法の問題として冷静に死刑判決を下した。それからしばらくして、ピョートルは刑務所のヤチェクを訪ねる。それは死刑執行の日。目隠しをされた彼は発作的に必死に暴れるが、警護官が彼を押さえつけ、いつもの手順通りに絞首刑を執行する。
Lazar Jacek
Piotr
Taxi Driver
Police Inspector
Cashier
監督、脚本
脚本
製作
撮影
音楽
美術
編集
音響
字幕
字幕監修
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