キム・イェリョン
ミョンヒ
韓国現代史を背景に、伝統的な一家に生まれたある男が、次第に同性愛に目覚めていく様を描いた一編。監督・脚本は韓国映画界の巨匠イム・グォンテクの助監督(「シバジ」「アダダ」など)をつとめた、本作が監督第2作となるパク・ジェホ。大阪・アメリカ村のパラダイス・シネマにてスプラッシュ公開された。
韓国。1955年、春川。朝鮮戦争後、未亡人になった母親は、長女のミョンヒ(キム・イェリョン)と長男のミョンス(イ・ホンソン)を連れて、金持ちの朴(ミョン・ゲナム)の第4夫人として再婚した。59年、“私”は生まれた。伝統的な家父長だった朴は、本妻との間に生まれて今は放ヨウ中の長男より、幼い私を理想の息子に育てようとした。64年。姉ミョンヒは勉学を許されなかったため、秘密で夜学に通い、兄ミョンスは不良学生になっていた。待には『黄色いシャツ』のツイストが流行していた。60年代後半。朴正 大統領の軍事独裁政権下。朴の甥ジュンウ(キム・セドン)が、学生運動で警察に追われてやって来た。ミョンスは彼にひかれ、二人は許されない愛におちる。ソウルで同棲する二人だが、やがて夢は破れ、ミョンスは一人娘を育てながら大学で独学した。ミョンスはヴェトナム戦争に赴き、戦死した。79年。朴正 大統領暗殺と同じ頃、父・朴が死ぬ。80年代後半。“私”にとって唯一の大切な女性だった母が死んだ。そして90年代。映画監督を夢見て企業のCF監督になった“私”。ある日、ひょんなことでのぞいたゲイ・バーで同性愛に目覚めた。恋人は料理と洗濯が上手な52歳の中年男。だが、彼にも家庭があって“私”と多くの時間はすごすことができないのだった。
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