コ・ジョンイル
ビョンテ
都会から田舎の小学校に転校して来た少年が、クラスだけでなく担任教師までも牛耳る級長の絶対支配に抵抗していく孤独な戦いを描く。監督・脚本は『九老アリラン』でデビューしたパク・ジョンウォンで、本作が二作目にあたる。国際的には無名の朴監督だったが、権力と自由の葛藤を鋭くえぐった本作は、世界35ヶ国の映画祭に招待される快挙を遂げた。原作はイ・ムニョルの同名小説で、フランス、日本をはじめ世界11ヶ国で翻訳されている。製作はト・ドンファン。撮影はチョン・グァンソク。音楽はソン・ビョンジュン。美術はト・ヨンウ。編集はイ・キョンジャ。主演はコ・ジョンイルで、デビュー作「ひとりで廻る風車」で大鐘賞新人賞を受賞し、本作が二作目。級長役のホン・ギョンインはオーデションで選ばれた新人。92モントリオール世界映画祭最優秀製作者賞、ハワイ映画祭グランプリなどを受賞。
予備校教師のビョンテは小学校の恩師チェ先生の訃報を聞き、30年前のことに思いを馳せる。五年生のビョンテ(コ・ジョンイル)は、ソウルから地方の小学校に転校してきた。編入したクラスには級長のソクテ(ホン・ギョンイン)が君臨していた。同級生たちは食べ物を差し出し、試験の答案も代筆していた。ビョンテはあらゆる手段を講じてソクテへの服従に抵抗するが無駄に終わり、次第に彼の腹心の部下になることに心地よさを感じ始める。六年生になるとソクテの独裁ぶりに疑問を抱いた若い担任のキム先生(チェ・ミンシク)は、試験の代筆を見抜き、全員の前でソクテに体罰を与える。それから同級生たちは堰を切ったようにソクテを糾弾を始めるが、何故かビョンテはできなかった。その夜ソクテは学校に放火して姿を消した…。チェ先生の葬儀に参列するかつての同級生の中にソクテの姿はなかったが、大きな花輪だけが届けられる。
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