原田美枝子
山岡照恵/陳(和知)豊子
幼い頃に実母に折檻を受け続けた記憶から脱しきれないひとりの中年女性の姿を通し、親子の絆とは何かを問う人間ドラマ。監督は「学校の怪談2」の平山秀幸。脚本は、下田治美の同名小説を基に「岸和田少年愚連隊」の鄭義信が脚色。撮影を「学校の怪談3」の柴崎幸三が担当している。主演は「絵の中のぼくの村」の原田美枝子。文部省特選、第22回モントリオール世界映画祭国際批評家連盟賞受賞作品。キネマ旬報日本映画ベスト・テン第2位。
早くに夫を亡くし、娘の深草(野波麻帆)とふたり暮らしの山岡照恵(原田美枝子)は、昭和29年に結核でこの世を去ったアッパー(父)・陳文雄(中井貴一)の遺骨を探していた。そんなある日、彼女の異父弟・武則(うじきつよし)が詐欺で捕まったという知らせが届く。30年ぶりの弟との再会に、照恵の脳裡に蘇ってきたのは、幸せだとは言い難い幼い頃の母親との関係だった──。文雄の死後、施設に預けられていた照恵を迎えに来たのは、かつて父によって引き離されたはずの母・豊子(原田美枝子/2役)だった。ホステスをしている豊子にバラックの家に連れていかれた照恵は、そこで新しい父・中島武人(モロ師岡)と弟・武則と引き合わされる。やがて中島と別れた豊子は、ふたりの子供を連れて“引揚者定着所” に住む和知三郎(國村隼)の部屋へ転がり込む。和知は傷痍軍人をいつわり街角で施しを受けている男で、子供たちには優しかった。しかし、この頃から豊子の照恵に対する折檻が、日増しにひどくなってゆく。照恵が文雄の形見の手鏡を隠し持っていたことを知っては殴り、友達と花火を見に行く小遣いをねだれば蹴り、和知の前で着替えることを恥じらえば打った。だが、ただひとつ髪を梳く時だけは豊子は照恵を褒めてくれ、その時だけは照恵は母の愛を感じられた。中学を卒業した照恵は、建設会社に就職し、独り暮らしを考えるようになる。しかし給料は全て豊子に取り上げられる始末で、このままでは一生母から解放されないと思いつめた照恵は、豊子が和知を捨て子供たちを連れて家を出て行こうとした日、遂に家を飛び出すのだった──。文雄の遺骨の手がかりを辿るうち、照恵は深草と父の故郷である台湾の沙塵を訪ねる。そこで待っていたのは、照恵たちの訪問を快く思わないアベー(伯父)一家だった。ここに父の遺骨の手がかりはない、そう感じた照恵は、かつて父と親交の厚かった車谷夫妻を、台湾の奥地に訪ねる。車谷夫妻から文雄と豊子の出会いや自分の誕生の話を聞かされる照恵。自分は文雄の子供ではないのではないか、と疑っていた照恵にとって、それは嬉しい収穫だった。日本に帰った照恵は、区役所で父の遺骨の行方を探し当てる。そんな照恵に、深草が豊子に会いに行くことを勧めた。「母さんはお骨を探す旅をしてたんじゃなくって、お婆ちゃんを探してたんでしょ」。母親を否定し続けてきたつもりの照恵は、深草の言葉で自分の本当の気持ちを悟り、豊子との再会を決心する。年老いた豊子は、ある漁村でビューティー・サロンを営んでいた。客を装い、照恵は母に再会する。豊子もそれが照恵だと気づくが、ふたりは親子の名乗りをあげることをしなかった。母親との別れを自分なりにすませた照恵は、帰りのバスの中で、それまで母の顔色ばかりをうかがい無邪気に泣くことすらなかった子供時代の思いを深草に語り、涙を流す。その後、再び照恵は文雄の故郷を訪れる。その表情には、全てに解放された晴れ晴れとしたものが浮かんでいた。
山岡照恵/陳(和知)豊子
山岡深草
陳文雄
5歳の山岡照恵
10歳の山岡照恵
15歳の山岡照恵
和知三郎
和知武則
王東谷
王はつ
4歳の和知武則
7歳の和知武則
11歳の和知武則
中島武人
竹内俊男
片倉修司
高田イネ
村田幸子
酒井千鶴
キャバレーの客
キャバレーの客
キャバレーの客
キャバレーの客
監督
脚本
原作
製作
製作
製作
撮影
音楽
美術
美術
編集
衣裳
衣裳
特殊メイク
特殊メイク
照明
録音
装飾
音響効果
ビジュアルエフェクト
助監督
製作担当
プロデューサー
プロデューサー
プロデューサー
台湾製片
共同プロデューサー
共同プロデューサー
音楽プロデューサー
ビジュアルエフェクト・プロデューサー
スチール
スクリプター
[c]キネマ旬報社