宮尾ハナエ
杣人
「萌の朱雀」でカンヌ国際映画祭カメラドールを受賞した河瀬直美監督が、杣人(林業を生業とする人)たちの暮らしぶりにカメラを向けたドキュメンタリー。8ミリ+VTR・16ミリからのブローアップ。
「萌の朱雀」のロケ地として訪れた奈良県吉野村平雄に住む人たちの、自然と共に生きる姿に感銘を受けた河瀬監督は、再びその地を訪れて彼らにカメラを向けた。独り暮らしは淋しいが気楽だと語る老女、孫の成長を楽しみにしている老人、伐採した杣木を競りに出す人、子供を失った悲しみを語る老父、パーキンソン病の治療のことを話す老夫婦、親の面倒のために好きな人と結婚せずに暮らしてきた老人。それぞれに生きてきた道は違うけれど、彼らの顔には生きてきた証=年輪が刻まれていた。老いと闘いながらも、逞しく力強く山に生きる人たちの姿が、淡々とした映像の中に生き生きと写し出されていくもうひとつの「萌の朱雀」。
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