フェス・パーカー
Clint
ウィル・ジェームズの小説『一匹馬スモーキー』をハロルド・メドフォードが脚色し、「ズール族の襲撃」のジョージ・シャーマンが監督した西部劇。撮影はジャック・スウェイン、音楽はリース・スティーヴンスが担当。出演は「突撃隊」のフェス・パーカー、テレビ出身の新星ダイアナ・ハイランド、「折れた槍」のカティ・フラドー、ロバート・J・ウィルクほか。製作は「南太平洋爆破作戦 モリツリ」のアーロン・ローゼンバーグ。
ニュー・メキシコの高原地帯にロッキングRという牧場があった。牧場主はジュリー(ダイアナ・ハイランド)という若い女性である。この牧場からほど遠からぬ高原に多数の野生の馬がいて、その中にひときわ目立つ駿馬がいた。それは極めて気性の激しい馬で“スモーキー”というあだ名がついていた。牧童たちはこれを捕まえ馴らして売りたいと考えていたが、まれに見る荒馬なのでちっとやそっとでは捕まりそうもなかった。ところがこの馬を、この地方へ流れてきた牧童と名乗る男クリント(フェス・パーカー)が見事に捕まえジュリーの牧場へ連れて来た。ジュリーは早速彼を雇い入れたが、牧童頭のジェフ(ロバート・J・ウィルク)は快く思わず、クリントが前科者であるという噂をどこからか聞いてきて、ジュリーの前で白状させようとした。だがクリントは何故かそれについての釈明を断った。ある日クリントの留守中に彼の弟で不良のフレッドが偽名を使ってジュリーに雇われていた。町へ遊びに出たフレッドはとばくに負け、クリントの名を使って莫大な借金をして帰ってきた。怒ったクリントが殴り倒すと、フレッドは逆恨みしてクリントが手塩にかけて馴らした“スモーキー”を博労に売ろうとした。ところが柵から出そうとした時“スモーキー”は彼を蹴殺して逃げ去った。第2次大戦が始まった頃、“スモーキー”は「世界一荒馬グガー」と呼ばれるロデオの人気馬となっていた。戦後復員したクリントは再びジュリーの牧場へ帰った。折から町ではロデオのパレードが行なわれていた。クリントはふとその騒ぎの中で、クズ屋の車をひく痩せ衰えたビッコの馬を発見した。驚いたことにそれはあわれにも“スモーキー”のなれの果ての姿であった。
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