チャールズ・ブロンソン
Chino_Valdez
開拓期も終わりに近い1880年代のニュー・メキシコを舞台に、孤独な西部男と近代的な牧場主の戦いを描く。製作はディノ・デ・ラウレンティス、監督・脚本は「シノーラ」のジョン・スタージェス、原作はリー・ホフマン、撮影はアルマンド・ナヌッツィ、音楽はグイド&マウリツィオのアンジェリス兄弟が各々担当。出演はチャールズ・ブロンソン、ヴィンセント・ヴァン・パテン、マルセル・ボザッフィ、ジル・アイアランドなど。
暗雲が空をおおい、雷鳴が荒野を渡ってこようとしていた。心細さにおびえた1人旅のジェミー少年(ヴィンセント・ヴァン・パテン)はふもとの一軒家を発見し、飛び込んだ。家主はチノ・バンデス(チャールズ・ブロンソン)といい、白人とインディアンのハーフだった。これが縁となって、2人の共同生活が始まった。ある朝、チノとジェミーは街に馬を売りにいった。取り引きはうまくいったが、あとがいけなかった。喧嘩を売られ、カウボーイを殴り倒してしまったのだ。あわや血の雨と思ったとき、駅馬車から降り立った小柄な男が止めに入り、ことなきをえた。この地方の地主マラル(マルセル・ボザッフィ)で、妹のルイーズ(ジル・アイアランド)が一緒にいた。みるからに勝ち気な彼女は、チノに心ひかれたようだった。ジェミーは、チノが1人で暮らしている理由が判ったような気がした。こわいものなしのこの男にも勝てない敵がいる。それは彼が背負っている混血の宿命だ。ジェミーはチノの苦しみをみるに忍びなかった…自分がいると負担になりはしないかとも思った。牧場に帰るとジェミーは荷物をまとめた。チノは彼を止めなかったが、出ていく前に馬を運動させてくれといった。ジェミーは山へ登った。雄大な荒野を野性の馬たちがのびのびと駆け廻っている。1頭の雄大なオス馬フラッグもいた。ジェミーはもう1度ここに留まる決心をした。数日後、出産まぎわのメス馬が喉に傷を負って苦しがっているのを発見した。マラル邸に単身、チノが現われたのはそれからまもなくだった。「柵をたてたな。針金でうちの馬が怪我をしたぞ。」「測量したら、北25マイルまで私の土地と判ったのだ。」憮然として帰りかけるチノに、ルイーズが声をかけた。「お宅の馬を見せて下さらない。」言葉通り、ルイーズは牧場に来たが、チノはとりあわなかった。そんなことが幾日か続き、女の意地が勝って2人は愛し合うようになった。が、混血のチノを嫌うマラルは、チノに妹から手を引けといった。チノはジェミーを連れ、インディアン集落へ向かった。出迎えたのは酋長のリトル・ベアでチノの親友だった。インディアンの歓待にも拘らず、チノは相変わらず浮かぬ顔だった。数日後、チノが牧場へ帰ろうと言い出したのも、結局はルイーズが忘れられなかったからだ。クリスマスの夜、街に出たチノは彼女と再会した。ひしと抱き合い結婚を誓う2人に、4つの黒い影がにじり寄る。マラルの命を受けた部下たちである。暗闇の中でのすさまじい死闘。保安官が割って入ったが無駄だった。ジェミーのかわいがっていた馬が殺され、ルイーズの待つ教会へ急いだチノがマラルの手におちる。鞭でうたれ、半死半生のチノを救ったのはリトル・ベアだった。チノのライフルがマラルの部下を1人ずつ血祭にあげる。だがマラルは停戦を申し出た。荒々しい開拓の時代に幕が下りようとしている。地主も牧場主もいつか滅びるにちがいない。それなのに自分たちがしているのはなんと愚かしい争いか。チノも同じ思いだった。チノは牧場へ引き返すと馬を放し、ジェミーにいった。「お前はお前の道をいけ。」1人前の男として、あらためて人生の荒野をめざさなければならない。少年が去ると、チノは家に火を放ち、馬にまたがった。
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