舞台、映画、文筆などマルチな才能を発揮し、世界的評価を得た寺山修司。彼が主宰した劇団天井桟敷に参加し、寺山の死後、寺山籍に入って“寺山修司の弟”となった森崎偏陸(もりさきへんりっく)の姿に迫るドキュメンタリー。「樹の上の草魚」の石川淳志監督が7年間に渡ってその姿を追い、寺山ワールドの後継者の内面を捉えた。
ストーリー
1974年に発表された寺山修司監督の実験映画「ローラ」。客席にいた1人の男がスクリーンの中の女たちに罵倒され、憤然とスクリーンに飛び込んでいくものの、丸裸にされて追い出される。その“観客”を演じている青年が森崎偏陸(もりさきへんりっく)である。森崎偏陸は本名。幼少時、親類の永田家に預けられて育つが、高校時代に家出。寺山の元を訪れ、劇団天井桟敷に参加する。やがて、1983年に寺山が亡くなると、母・はつに乞われ九條今日子とともに寺山籍に入り、戸籍上“寺山修司の弟”となった。従って、彼には“生みの母”、“育ての母”、“戸籍上の母”という3人の母が存在する。寺山亡き後は写真家の荒木経惟、森山大道、作曲家の松村禎三、イラストレーター宇野亜喜良、映画編集のベテラン浦岡敬一ら、日本の誇る芸術家たちとの仕事を次々とこなしていった。さらに、偏陸は寺山が残した「ローラ」上映のために、日本だけでなくパリにまでも飛び出していく。この作品の上映のためには偏陸が必要不可欠であり、永遠に生き続ける作品の寿命を寺山は偏陸に託していた。35年前の姿と同じ白いタートルネックのセーターに赤いジャケット、赤いパンツでスクリーンの中に飛び込んでいく偏陸。そんな姿を間近で見てきた人々も登場し、思い出を語る。偏陸のこと、寺山修司のこと、天井桟敷のこと。寺山の元で自分の居場所を見つけた人々。天井桟敷の女優だった高橋咲がつぶやく。“偏陸は自分と向き合ったことがあるのかな……”寺山ワールドのトリックスターとしての運命を背負った森崎偏陸。寺山修司の魂の継承者。その心の光と闇。生きる喜びと堪え難い孤独。語られる数々の断片の中から、カメラは次第に“寺山ワールドのトリックスター・森崎偏陸”の中に確かに存在する“人間・森崎偏陸”の姿をとらえていく。
キャスト
荒木経惟
宇野亜喜良
浦岡敬一
緒川たまき
木村威夫
九條今日子
佐々木英明
笹目浩之
J・A・シーザー
シルヴェット・ボドロ
平常
高橋咲
新高けい子
萩原朔美
日野利彦
弘子・ゴヴァース
松村禎三
三上博史
森山大道
山ちゃん
蘭妖子
若松武史
スタッフ
監督、撮影、編集
石川淳志
編集
石川一恵
音響効果、MA
斉木琢磨
音響効果、MA
吉方淳二
プロデューサー
岡田博
プロデューサー
千田潔
プロデューサー
長田俊一
プロデューサー
石川雄志
宣伝美術
宇野亜喜良
主題歌、作曲、音楽演奏
えびすまいる
デザイン
鈴木一誌
振り付け
斎藤千雪
タイトル
荒木経惟
編集協力