堺雅人
オオバヨウゾウ
太宰治の同名小説を「ヘルズエンジェルス」のクリエイター集団“マッドハウス”がテレビアニメ化した『青い文学シリーズ 人間失格』の劇場用フルバージョン。監督は「劇場版 カードキャプターさくら 封印されたカード」の浅香守生。声の出演は「クヒオ大佐」の堺雅人、「8月のシンフォニー 渋谷2002~2003」の高木渉など。
昭和四年、夏。子供の頃から人間の営みというものに実感が持てずにいる画家志望の大庭葉蔵(声:堺雅人)は、貧しい人間からカンパを搾取するための真似事の左翼活動に参加、その日暮らしをして過ごしていた。いつものように芝居をし、金をせしめる葉蔵。ところが、反社会的な運動を検挙すべく現れた特高の小菅に追われ、逃亡するはめになる。逃げ込んだ先は、恒子(朴ろ美)という女のいるカフェだった。彼女は葉蔵を匿うが、あなたは純粋だ、と微笑む恒子に葉蔵は殺意を覚え、二人はどちらともなく「一緒に死んでくれないか」と呟く……。気が付くと葉蔵はベッドの上に寝かされていた。恒子が死んだと聞かされ、呆然とする葉蔵。親にも見捨てられ、監視付きの部屋に通された彼はそこで“お化け”の幻を見る。それは以前、葉蔵がゴッホの自画像を見て自分も描こうとした、自分自身であった。葉蔵は、縁を切ったはずの悪友・堀木(高木渉)のもとへ向かうが、堀木は葉蔵に軽蔑の眼を向ける……。昭和七年、冬。葉蔵は、雑誌社の記者・志津子(久川綾)とその娘の茂子と同居していた。そんな中でも、父の「金を稼げない奴は人間として失格」という言葉が彼を苦しめる。そこで志津子が、葉蔵の描いた漫画を売り込みに行くと、結果は頗る好評。葉蔵は心持ちを豊かにするが、堀木の「世間」という言葉に引っかかりを覚える。漫画の持ち込み先の編集長も「世間」を口にし、心中の件に触れてくる。雪景色の中、「生まれてきて、すみません」と葉蔵は力なく横たわるのだった……。時が過ぎ、葉蔵は美子(能登麻美子)と居を構えている。そこに久しぶりに堀木が訪れ、葉蔵の父の訃報を伝える。さらに堀木は軍隊に行くという。そんな中、美子と葉蔵を見えざる手が引き離そうとする。全てを失った葉蔵は、自分が人間として何かが足りない、すなわち「人間失格」であることに至る。そして彼は、薬品を飲んで自殺を図るのだった……。