ハワード・ヴェルノン
ヴェルナー・フォン・エーブルナック
「サムライ」のジャン=ピエール・メルヴィルが、第二次大戦中、フランス人の家庭に同居することになったドイツ将校の姿を通じて人間の誇りを描いた長編監督デビュー作。原作はヴェルコールの同名小説。出演は「怪人マブゼ博士」のハワード・ヴェルノン。撮影を担当したのは「太陽がいっぱい」の名カメラマン、アンリ・ドカエ。デジタル上映。
1941年、ドイツ占領下のフランスの地方都市。ある冬の日、姪(ニコル・ステファーヌ)と暮らす老人(ジャン=マリー・ロバン)の家にドイツ将校ヴェルナー・フォン・エーブルナック(ハワード・ヴェルノン)が同居することになる。フランス語を話せる彼は、同居することの非礼を詫び、“自国を愛する人を尊敬する”と告げる。ヴェルナーは、老人と娘に敬意を表して礼儀正しく接するが、老人と姪は彼がいないかのようにふるまうのだった。一ヶ月が過ぎた寒い夜、ヴェルナーは暖炉に当たりながら語り始める。作曲家の彼は、父親の影響で幼い頃からフランス文化に憧れ、この戦争でドイツとフランスが結婚することで文化が融合し、両国によい結果をもたらすと信じていた。『美女と野獣』の物語に例えて、フランスが美女でドイツが野獣であると。またある日にはオルガンでバッハを演奏し、“バッハは人間離れしているが、自分は人間の音楽を書きたい”とも。こうしてヴェルナーが1人で語り、老人と姪が沈黙で答える時間が毎晩続いた。だが、2週間の休暇を得て初めてパリを訪れたヴェルナーは、帰ってくると居間に姿を見せなくなる。ある夜、軍服で2人の前に現れたヴェルナーは、パリでの出来事を語り始める。パリで、詩人だった友人から1日に2000人を殺せるガス室の話を聞いた彼が、“フランスとドイツの結婚”についての持論を語ると、占領の目的はフランスを叩き潰すためだと反論されたという。ナチスの残虐性を当然のことと考える将校たちの言葉に絶望した彼は、帰ってきてから町の人々の視線に耐えられなかったのだ。そして彼は、明日、戦場へ向かう決心をしたことを告げる。翌朝、家を発とうとしたヴェルナーは、机の上に本が置かれていることに気付く。そこには“罪深き命令に従わぬ兵士は素晴らしい”と書いた記事が挟まれていた。それは、老人が彼に贈った言葉だった。
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