山田真歩
ヤマダマホ
無名だが自己中心的な女優が、他人の好意は遠慮なく受ける一方で、恩を仇で返しながら自主映画製作を進めていく様を描いたブラックコメディ。主演は「SR サイタマノラッパー2 ~女子ラッパー☆傷だらけのライム~」の山田真歩。監督は、「機械人間、11号。」が水戸短編映画祭で準グランプリを受賞した期待の新鋭、加藤行宏。
小さな舞台小屋で一人芝居を演じる売れない女優、山田真歩(山田真歩)は、誰一人自分のことを褒めてくれないことに不満を感じていた。そんな時、友人の恋人が制作した映像作品が動画サイトで10万アクセスを記録していることを知り、自分が主演するネットドラマ制作を思いつく。芝居仲間の牧野(牧野琢也)を誘って田舎町の壊瀬を訪れた真歩は、偶然の重なりから地元住民の協力を得て、撮影を開始。だが、順調に進んでいく撮影とは反対に、真歩は人々から受けた恩をことごとく仇で返してゆく。やがて牧野は、彼女が周囲から“人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女”と呼ばれていることを知る。さらに、撮影時の不注意から、夫の誠(石川誠)と離婚する羽目になる真歩。それでも何とか無事に撮影は完了。ところが、相変わらず無遠慮な真歩は、打ち上げの最中に最大の功労者である牧野に暴言を吐く。自分に対して礼の一言もない真歩の態度に怒り狂い、掴みかかる牧野。それでも怒りが収まらず、真歩の実家へ向かう。だがそこで彼が目にしたのは、娘に完全に善意を吸い尽くされ、心が干からびてしまった抜け殻のような母親の姿。真歩の底知れぬ力に恐れをなした牧野は、そのまま彼女の前から姿を消すのだった。やがて完成した真歩のネットドラマだったが、評判は今一つ。意気消沈した真歩は、一から映画の勉強をやり直して、再チャレンジを決意する。そして数年後。真歩は、ニートになってしまった元夫、誠の姿を追ったドキュメンタリー作品を完成。映画監督として壊瀬の映画祭に戻ってくる。この作品は見事に高評価を受け、初めて褒められた真歩は、会心の笑みを浮かべるのだった……。
[c]キネマ旬報社