高橋惠子
森田千代
自殺の名所となった最果ての地で、商店を営みながら死にゆく人々を見送って、ひっそり暮らす初老の女性の姿を通じて、生と死の意味を問いかける。出演は「花物語」以来、これが23年ぶりの主演作となる高橋恵子、「ヘルタースケルター」の寺島進。京都造形芸術大学映画学科による映画製作プロジェクト“北白川派”の第3作。
山陰の小さな港町、上終(=カミハテ)。この街に暮らす初老の女性・千代(高橋惠子)は、亡き母が残した商店を継ぎ、自分で焼いたパンを売って細々と暮らしていた。無愛想でとっつきにくい彼女の店を訪れるのは、牛乳配達をしている自閉症の青年・奥田(深谷健人)と町役場福祉課の須藤(水上竜士)ぐらい。だが、いつの頃からか見知らぬ訪問者が現れるようになる。それは、店の傍にある断崖絶壁で自ら命を絶つため、死に場所を求めて来た者たちだった。彼らはそれを最後の晩餐とするかのように、千代が焼いたパンと牛乳を買い求めてゆく。彼らが自殺するだろうと気づいていても、彼女は決して止めず、ただ見送った人の靴を崖から持ち帰ってくるだけだった。故郷を離れ都会で事務用品納入業を営んでいる千代の弟・良雄(寺島進)。思うように行かない仕事に心身ともに疲弊していた彼は、馴染みのスナックで知り合った新入りのさわ(平岡美保)と親しくなり、彼女のアパートへ通うようになる。8歳の娘がいるシングルマザーのさわを何かと気遣う良雄。2人はお互いの淋しさを埋めるように急速に距離を縮めてゆく。無口なバスの運転手(あがた森魚)が今日もまた終点の上終まで見知らぬ客を乗せてくる。須藤からは、自殺騒動は町のイメージダウンになるため、気になる人が現れたら役場や警察に通報して欲しいと忠告を受けるが、千代はただ頷くばかり。“死にたいと思う人を、なぜ止めなくてはならないのか。”という言葉が千代の脳裏を反芻する。幼かった頃、あの断崖絶壁から飛び降りた動機の不明な父の死が、彼女の心に大きな影を落としていたのだ。ある日、訳ありげな母子が商店にやってくる。やはりその母親も死に場所を求めて彷徨っていたのだが……。
監督、脚本
脚本
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
装飾
プロデューサー
プロデューサー
プロデューサー
プロデューサー
プロデューサー
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