監督、撮影、編集
岩手県北上市に1,300年続く伝統芸能『鬼剣舞』。その源流と言われる岩崎地区で『岩崎鬼剣舞』に打ち込む人々の姿を通して、芸能が生活の一部となり、人々が絆を深める様子を1年に渡って追ったドキュメンタリー。監督は「朱鷺島 創作能『トキ』の誕生」の三宅流。単身で現地に長期取材を行い、貴重な映像を収録した。
ストーリー
岩手県北上市の農村地帯、岩崎地区に古くから伝わる国指定重要無形民俗文化財の民俗芸能『岩崎鬼剣舞』。1,300年の歴史を持つと言われるこの芸能は、もとは念仏を唱えながら踊る『念仏剣舞』だったが、異形の面をつけて勇壮に踊ることから“鬼剣舞”と呼ばれている。カメラは1年間に渡って、鬼剣舞に携わる人々、この地域に生きる人々の姿を追った。岩崎では保育園、小学校でもみんなが鬼剣舞を踊る。踊り手の奥さんたちや、北上翔南高校の生徒たちも鬼剣舞を踊り、あたかも地域全体が鬼剣舞を中心に回っているかのような様相を呈している。踊り手たちの多くは兼業農家の大工や職人たち。若い世代は勤め人も増えているが、忙しい仕事の合間を縫って練習に励み、子供たちを指導し、ほぼ毎週土日にある公演依頼のために日々奔走している。また、遠方の札幌や京都、佐渡の鼓童の人々なども岩崎鬼剣舞に魅せられ、20年来この地に通い続け、指導を受けている。カメラが追った一年のうちに、少子化の影響によって岩崎小学校が135年の歴史を閉じたこと、家元に当たる“庭元”が、恐らく最後と思われる舞を踊ったこと、剣舞の大師匠が亡くなったため、葬儀で剣舞作法の念仏と祈りの舞を踊る場面など、貴重なシーンを多く収録。生活に根ざした芸能のありかた、その地域共同体のありかたは、まさに宮沢賢治の『農民芸術概論』で述べられた理想を体現しているかのようだ。その姿は、共同体を失いつつある現代社会に生きる我々と、その生活から遊離した芸術のあり方に、多くの問題を投げかける。“究竟(くっきょう)”とは、“究極”と“屈強”の意味がある。この地に脈々と受け継がれてきた芸能の力、人と人が繋がる力。その強さはどこからくるのか。その力の源泉に迫る。それは、これからの私たちの生活を考える上で、貴重な機会となるに違いない。