クレイトン・ムーア
Lone_Ranger
このドラマは1932年連続放送劇として発表されて以来年を追って少年少女間の人気を増し、49年にテレビで放送されるに至って全米の人気を煽り、ゴールデン・アワーのよびものとなった。製作はウィリス・ゴールドベック、監督は「俺が犯人だ!(1955)」のスチュアート・ハイスラー、撮影は「恐怖のサーカス」のエドウィン・B・デュパーが担当。音楽はデイヴィッド・バトルフで全篇に流れる“ウィリアム・テル”のメロディは素晴らしい効果を挙げている。主演はテレビでローン・レンジャーを勤めたクレイトン・ムーア、これに従うトントというインディアンはテレビ劇同様ジェイ・シルヴァーヒールスという本物のインディアンである。助演はボニタ・グランヴィル、ベリー・ロペッツなど。
それは昔、物騒な事件が頻発する荒涼たる西部の大平原に白馬シルヴァー号にまたがり、サッソウと駒を進める2人の快男児。その1人は黒マスクに顔を覆った熱血漢ローン・レンジャー(クレイトン・ムーア)、彼に従うはインディアンのトント(ジェイ・シルヴァーヒールス)である。2人がインディアンの古巣スピリット・マウンテンに近付いた時、突如四辺の静寂を破る銃声。見ると牧夫のラミレスが、数人のインディアンに追跡されている。アワヤという瞬間、1鞭入れたローン・レンジャーがこれを助けた。ラミレスは土地の現状を具に話し、知事の視察を告げた。知事の来訪は、若くて金持ちの牧場主リース・キルゴアの要請によるものだった。その目的はインディアンに不穏の企みがあると吹き込み、この地方はインディアンの暴動が起こりそうで、とても州政を布くには適しないと印象づけさすためだった。キルゴアは私服を肥やすには、手段を選ばぬ男、配下にはキャシディをはじめ無頼の徒がいるキルゴアは到着した知事に、インディアンの横暴を報告する。だが知事は秘かにローン・レンジャーに会いインディアンが鞍を置いた馬にのったりする筈がない、キルゴアの報告は信用できぬと聞く。この頃インディアン集落では、酋長レッド・ホークがローン・レンジャーを前に、副酋長アングリー・ホースや部下が、何時襲撃に出るかもしれぬことを話していた。一方キャシディはキルゴアの牛を市場へ護送するため、仲間を集めた。ラミレスもその1人に加わった。彼はその後アビリーンの町で、キャシディがダイナマイトを買ったのを知り、ローン・レンジャーに密告しようとしたが、その前に1党に殺された。不穏な形勢を察したローン・レンジャーはアビリーンの町でラミレスの死と、悪党がダイナマイトを買い入れた事実を突きとめた。事情は日々急迫していく。キルゴアが町の人々を煽動し、戦闘準備をすれば、インディアンもまた戦備をととのえていた。この情勢にローン・レンジャーは、詳細を知事の許へ急伸させ、騎兵隊の派遣を要請した。ローン・レンジャーは驚くべき事実を知った。インディアンの領土スピリット・マウンテンには、豊富な銀鉱が埋蔵されている。策士キルゴアの真意はそこにあったのである。戦機熟し、あわや戦端が切られるという刹那、崖上に現われたローン・レンジャーは、ダイナマイトの雨を彼らの頭上に降らした。不意を衝かれて両者は大混乱、しかも駆けつけた騎兵隊の出現に、キルゴア一味は包囲された。ラミレス殺害の科で逮捕状を突きつけられたキルゴア。彼がその罪はキャシディにあると言いかけたとき、キャシディの銃弾は彼の腹部を貫通した。親分を射殺し逃走するキャシディ、それを追うローン・レンジャー。悪漢キャシディも遂にスーパーマン、ローンレンジャーの前に屈した。一夜明ければ戦乱の巷は平和の世界へ――。平和を招いたローン・レンジャーは、静かに町を去っていく。
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